ゆう

さがすのゆうのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
3.9
座間9人殺害事件、相模原障害者施設殺傷事件、市橋達也の逃亡録、京都ALS嘱託殺人事件など、近年のセンセーショナルな事件をモチーフに、非常に深いテーマ性やエンターテイメント性へと昇華していて見事としか言いようがなかった。

単純にろくでもない親父が報奨金目当てに犯人に近づいていきトラブルに巻き込まれていくみたいな展開を予想していただけに、良い意味で裏切られた。
あと、佐藤二朗の演技にも。『かぐや様は告らせたい 』みたいな、作品中に笑いを取りに行くちょっとしたスパイス的な立ち位置でしか観たことがなかったので。
ダメ親父っぷりな一面、献身的な夫としての一面、犯罪の沼にハマっていく犯罪者としたの一面、どれも心をざわつかせる素敵な演技力であった。

実の父親を本当に警察にリークしたのか、パトカーのサイレンが聞こえた時の『迎えに来たで』がジョークなのかどうかは劇中では、ポワンとした感じで終わるが、どちらにせよ、人を殺めてしまった父親、殺人に手を貸していた父親との関係を娘が今後どう構築していくのか、また智側も首を絞めて殺す事に何らかの"扉"を開いてしまっており、そこの邪僻と今までの行いとどう向かいあっていくのだろうか。
2人の親子の在り方をこれからどう模索していくのか、つまり新たに『さがす』ものが、ラストに突きつけられている。

父親を『さがす』、犯人を『さがす』、死にたい人を『さがす』という3人の視点から、一気にここの"さがす"にフォーカスしていくのは巧みすぎて震えました。
母親が死ぬ為に使用した卓球台、その真ん中で2人を隔てているネット自体は低いですが、乗り越えなければならない障壁は決して低くはないはず。

当然、安楽死といった簡単に答えの出ないテーマに関しても、観た私達なりの答えを『さがす』必要もあるでしょう。
そう易々と"見つからない"だけに、同じ課題にぶち当たった時にまたこの作品を思い出すんだろうな。そういった意味でも良い映画だと思う。

果林島に住むAV大好き変態おじいちゃん、良いキャラしてたなぁ。
ゆう

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