TaichiShiraishi

さがすのTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

さがす(2022年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

佐藤二朗の正しい使い方がようやく見つかったかのような作品だった。片山監督がポン・ジュノ監督の助監を務めていたこともあるが、日本版ソン・ガンホのような存在感があったと思う。その他、予想のつかない展開の数々や、意外なタイミングで挟まれるコメディ演出など、ポン・ジュノ監督らしさはそこかしこにあった。

ただ、日本の関西を舞台にした人と人との距離感が近い街の特性を生かした細かい会話シーン、そんな中で人が消え、殺人鬼が話に絡む独特のストリーテリングに、卓球場という設定を活かした演出はオリジナリティがあったと思う。

何度か描かれる卓球のラリーは「人と人とのコミュニケーション」のメタファーであり、そのツールである球を踏み潰す清水尋也演じる殺人鬼「名無し」の怪物性や、最後の親子の圧倒的な会話のラリーも印象的な演出だった。その他、食事を共にした相手まで容赦なく殺す残虐性と、しかし「安楽死」に確かな思想を持つ殺人鬼像や、正しさ一辺倒で語れない「介護」の問題など要所にザワザワする設定を盛り込んできている。

そんな数々の非情な展開に対応する佐藤二朗と伊藤蒼の芸達者ぶりにも驚かされた。特に妻の介護をする場面の、佐藤演じる父に要介護状態の母が突如いう場面は、事前に説明がなかったなかで急遽あるセリフを言っており、素の反応らしきものもあって目が離せない。

サスペンスとしても面白いが、それ以上に各キャラが何を「さがして」いたのか、考えてしまう傑作だった。
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