おなべ

さがすのおなべのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
3.7
◉「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで。」

◉大阪の下町で暮らす原田智と娘の楓。ある日、「指名手配犯をさがす」と言い残し、突然父が失踪した。残された楓は、警察や先生に相談するも取り合ってもらえず、自らの手で父をさがす事に…。

◉『岬の兄弟』の《片山慎三》監督。センスを感じさせる演出が作品の至る所で散見され、よく作り込まれているなという印象。巧みなミスリード然り、ただのノワールで終わらせない作品の奥行きに高評価。

◉父親・原田智を演じた《佐藤二郎》の演技も高評価。《福田雄一》組で見せる、抜けたオフザケキャラとは裏腹に、罪悪の狭間で葛藤する難しい役柄を見事に演じきっていた。

◉「韓国ノワール臭が漂う」と評判の本作。確かに、連続殺人鬼の容赦の無さや救いの無さ、善悪の天秤、無常を突き付けられる現実感など、韓国ノワールを彷彿とさせる要素は多分にあった。

◉そして、人間のさらに奥の部分を炙り出した印象的なラストは、自分も含めて、多くの鑑賞者に衝撃を与えたと思う。

◉ただ、個人的には、より過激で、より血生臭く、より肺腑をえぐられる韓国ノワールの方が好みかなぁというのが正直なところ。殺人鬼の猟奇性も救いの無い絶望感も、もう少し欲しかった。(←異常?)












【以下ネタバレ含む】












◉ピンポン玉を使った見事な演出。母親が死に、手からずり落ちたピンポン玉を、山内が無常にも踏み潰すシーン。何かが壊れたようなニュアンスを示唆する秀逸な演出だった。

◉また、親子でひたすらラリーをするラストシーン。何が凄いって、たっぷりと“間”を使う事で、親子の心の距離感や心情を表しており、尚且つ、あえて鑑賞者にも考える時間を与えているという、秀逸な“間”の使い方。他にも色んな意味や憶測が考えられそう。

◉母の自殺を、智が呆然と見つめるシーンもなかなか。

◉タイトルでもある「さがす」の意味について。
物理的に父親を「さがす」と、在りし日の父親を「さがす」という、ダブルミーニング。父親を見つけるまでの物語じゃなくて、さらにその後に真のテーマを定義しているのは、タイトル含めさすがだと思った。

「探す」「捜す」=「さがす」
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