プリオ

さがすのプリオのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
5.0
姿を消した父を探したら、父の名前を語る男に会いました……

この入りで面白くないわけがない。
非常に不気味で、興味を引く。

オリジナリティある強烈なストーリー性はさることながら、キャスト陣の演技が素晴らしい。
伊東蒼ちゃんは、映画界の宝なので、周りが輝きを汚さないことを祈る。こういう、自然な演技ができる女優さん、映画が増えてほしい。
佐藤二朗、清水尋也の怪演も見どころだ。ここ最近の佐藤二朗は、実力を発揮し過ぎている。単なる面白おじさんじゃないことを痛感する。

構成が非常に凝っている。
時間を遡り、キャラ3視点で描き、盛り上げていくスタイルはタランティーノ映画を想起させる。
ジャンルはサスペンスで、エログロも結構あるのだが、介護、貧困、善悪、生死、親子愛とテーマがてんこ盛りで、お腹いっぱいになる。

本作の片山監督のこれからが楽しみである。




-----ネタバレ-----




多視点、時系列が複雑に絡み合いカタルシスのあるラストに終結する。

「愛のむき出し」となんか似ている。
ただ、「愛のむき出し」はラストで結ばれるハッピーエンドで終わったが、「さがす」は親子の決別で終わるバッドエンドだ。

でも見方を変えると、救いのあるラストとも言える。

娘は父がこれ以上堕ちないためにも、警察に連絡するのだ。父は堕ちるとこまで堕ちた。そんな人間を止める役割を担うのは、娘しかいなかった。

かなり怖くて印象に残るシーンがたくさんあるが、特に「自殺に失敗した奥さんのシーン」が忘れられない。

奥さんは、カーテンで自殺を測ろうとするも、体が不自由なため失敗する。その姿を発見してしまう夫である佐藤二朗。そして、二人の目が合い、お互いに固まる。あの奇妙な間が忘れられない。強烈なシーンだと思う。

その理由としては、奥さんが死んだかどうか様子を伺っているようにも見える佐藤次郎の表情にある。あの空気感が、とても辛くて怖くてしんどかった。

きっと、奥さんが自殺してくれたら、夫も奥さんも楽になるだろう。でもそれは、現代社会では心の中では思ってるが、なかなか口に出さない想いだ。なぜなら、それはシンプルに人間の道徳に背くからだ。

しかし、ある出会いが、道徳観を崩壊させる。

なかなか問題作。
プリオ

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