りょう

さがすのりょうのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
3.8
完全に山内を否定できない部分もある気がして、後味の悪い作品だった。
生きたいと思っている患者と、周りが沢山のお金と時間をかけて生かそうする患者がいるというところ。たしかにそうなのかもしれない。

佐藤二郎が奥さんを絞め殺そうとするところ、「岬の兄弟」で兄が障がいを持つ妹をコンクリートブロックで殴ろうとするところを思い出した。

伊東蒼、佐藤二郎、清水尋也、この3人が素晴らしい。伊東蒼は関西弁や表情が素晴らしく、まだ観れていない「空白」を早く観たくなった。清水尋也はあの切長の目、目が死んでいるというのだろうか、それが山内の役にどハマりしており、殺人に躊躇しない役どころがよく合っていたと感じた。佐藤二郎は、クチャクチャチュパチュパ以外はほぼおふざけ無し、特にセリフは音楽に上書きされていたが、奥さんに手をかけようとしてしまったシーンがとても印象に残った。佐藤二郎、おそるべし。

父が改めて自殺志願者に手をかけようとしたことを考えると、お金に窮してやろうとしたというよりも、山内の考えに賛同するところがあったのか。死にたがっていた自分の妻を楽にさせてあげたことに後悔は全くなかったということなのか。あるいはムクドリにとどめを刺した時に目覚めるものがあったのか。生と死のきれいごとでは済まない部分への問題提起。


この作品を観るきっかけとなったのは、今年7月に38歳の若さで亡くなられた中丸シオンさん。最後の方に佐藤二郎の自作自演を疑う刑事役で出演されていました。重要な役どころとして見事な演技でした。ご冥福をお祈りします。
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