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さがすのごはんのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
5.0
ストーリーとしてはざっくり原田智(佐藤二郎)が一線越えてしまう前と後に分けられる気がするけど、越えてしまうまでがとにかくしんどかった…
越えてしまってからは人が人として落ちていくのはあっという間と言わんばかりにズルズル、どんどん戻れないところまで落ちて行く感じ。

最終的に騙し合いになる感じとかは面白いし、
事の真相が気になる作品としては面白いけど、
見てるの辛くなるしんどさもある作品。


「おもしろオジサンじゃない佐藤二朗!」
明るくおもしろいイメージが強い分、重苦しいシーンはより一層重く感じた。
「死刑にいたる病」の阿部サダヲや「紙は見返りを求める」のムロツヨシもそうだけど普段明るくサービス精神全開で楽しませてくれる人のこういう演技ってギャップあるぶん怖さとか重さとか増し増し。

「原田楓役の伊藤蒼さん」
個人的には空白での印象が強い伊藤蒼さん
空白のインパクト強すぎて、商店街を駆けていくシーンは「そんな走ったら危ないって!!」すごい思ってしまったが、まぁ大丈夫でしたね。
空白以来、ドラマとかでも走って逃げるシーンとか見るとソワソワしちゃう・・・

「玄関から妻を見つめるシーン」
体が不自由になってしまった、妻を支え生活するシーンはどこ切り取ってもしんどかった。
最終的な決別、犯行のシーンもきついかったけど、
妻自身が不自由な体をなんとか使って自分で首を吊ろうとしているシーン、そしてそれを帰宅した原田が玄関の扉から見てしまうシーン。
本来ならすぐにでも妻に駆け寄って助けなければいけないであろうシーンだけど、じっと見つめる原田。
なかなかないくらい嫌なシーンだったけど個人的にはかなり名シーン。
そのあとの優しく献身的な原田の様子もしんどかった。

「島のおじいさん」
オレンジくれるおじいさん、ベタな島で農家やってる人って感じだったけど、自宅にギャグみたいな18禁部屋つくってんのなんなん笑
ある意味山内にとっては食事も寝床も用意してくれてるし、3大欲求満たしてくれる存在でもあったのかも。


「ムクドリさん」
なんというかこう言う人いるよなぁって気がする、なんともいい役と言うかキャラとして良いキャラだった気がする。嫌な感じの人だけどね。
自殺願望の人たちも基本的には最後はやっぱり死にたくないって人ばかりだったのに、この人だけは本当に死にたい人だったっぽいのがなんかなぁ…

「親子の卓球ラリー」
ラリーからの卓球台のネットがズームで終わっていくけど、思い返すとネットだけでなく壁や扉のような隔てる物がそれぞれの立ち位置を示していたような気もした。
卓球台の向こう側で行われる犯行とか、壁を越えて逃げる山内とか・・・
そして父親は逮捕されてそれこそ壁の向こう側に行ってしまうんだろうな。

「ピンポン球」
妻が亡くなった時に山内に潰されるピンポン球。
ラストのラリーで取りこぼされたピンポン球。
そしてピンポン球がないのに続くラリー。
ピンポン球=家族との繋がりとかそう言うものだったのかな?
潰されるピンポン球はそのままそう言う事だろうし。
ピンポン球がなくても続くラリーはパッと見、親子として成り立ってる様に見えたけど、本音とかでやりとり出来てない騙し合いしてるってそれってもう成り立ってないよね。って感じで解釈した。
それでもエアラリーが続くのは親子の切りきれない縁があるって事なのかな…?



ラストにかけて物語が一気に回収されていく感じとかは爽快感すらあって全体的にテンポ感も良く楽しめる作品ではあるが、根底にある嫌なものが一緒にくっついて来るような作品でした。

今みるとポスターの3人の配置とか表情とか絶妙で良くできてると思う。
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