このレビューはネタバレを含みます
衝撃的な面白さだった。これは震える。
想像以上のハードさとアパートや路地裏のリアリティー、ドキュメンタリー性の高い画面などで、不快に思うほどの心のざわつきがずっと抑えられないまま進行する。
そんな中で所々コテコテ関西弁の漫才みたいなやりとりがあったりして、そのド・シリアスとコミカルのコントラストに韓国風の匂いを感じた。
そういった作品全体の雰囲気を体現するような佐藤二郎の演技力と存在力（それもそのはず、当て書きだったそう。）みたいなものもさることながら、それと「対決」することになる娘の絶妙な野暮ったさと困り顔がすごい魅力的で、父娘それぞれのパートで全く違った楽しみ方ができた。
『岬の兄妹』で扱われたような性的倒錯、というか倒錯した性が今回も印象的に登場していて、今作ではさらに「生命倫理」という紛糾する問題も加わって終始惑わされっぱなし。自分でも理解できないような感情の、柔く複雑な部分を掴まれてガンガン揺すられている感じ。
濡らす水滴とか、宙に揺れるソックスとか刀とか、表現的な演出も多数で観ているだけでざわざわする。特にラストの親子ピンポンの胸騒ぎは、知らず気道が細くなるようなとんでもない余韻を残した。
