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さがすのtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
3.7
再鑑賞。 
 
「名無し(懸賞金つき指名手配犯)を見たんや」と言った父親・原田智(佐藤二朗)が姿を消した。一人娘の楓(伊東蒼)は学校の教師に相談し警察へ行くがまともに取り合って貰えない。わずかな手がかりから父親を探そうと果林島へ渡るが……というミステリー。

指名手配犯の山内照美(清水尋也)のモデルは座間9人殺害事件からだろうなあと。
本来の犯人像とは違いフィクション用に作られた人物像だろうけれど、役を演じた清水尋也さんの佇まいがとにかく良い。
笑ったことなどなさそうな虚ろな表情、利己的で計算高く冷酷な顔つき。
きれいごとを並べて、原田を仲間に引きずり込むが自分で述べている言葉に矛盾がある。

「有料コンテンツ」という言葉をよく使う。
殺人を「救済、人助け、慈悲」だと言う。
彼にとっては殺人はコンテンツであり、馬渕老人のAVコレクションと同じ物でしかない。

「動いている女の子だめなんですよ」
という彼の言葉に馬渕老人はこれを聞いてSM(緊縛)フェチだと勘違いしたが、完全に動きを封じたうえで血を流す女性に性的な衝動を覚えるようなので、大分倒錯的。
 
娘の楓は父親を探し、父親は行き掛り上でムクドリという女性を探し、更にお金も探す、殺人犯の山内は犠牲者になる人間を探し……と、登場人物が何かしら『探し』ているという、タイトルに意味がいつくも重なっているのだなあと。

楓ちゃんが山内を追いかけてゆくシークエンスが良い。執拗に追いかける彼女、必死に走る山内、自転車から路地裏での逃亡劇の撮り方に惹かれる。

登場人物それぞれの個性が立っているのも良く、絶妙なバランスの良さ。

楓ちゃん役の女の子の演技力に素直に好感だったし、何より清水尋也さんの犯人役がとにかくよかった。独特の雰囲気があるなあ。

ストーリーの見せ方、構成もうまくて、視点を変えて時系列を巻き戻したりしながらある結末へ真っ直ぐ進むその展開の仕方も良かった。