Jack05

さがすのJack05のネタバレレビュー・内容・結末

さがす(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

「連続殺人犯を見た」と言い残し姿を消した父を娘がさがすサスペンス。予告に惹かれて鑑賞したが、いい意味で期待を裏切られた。映画のわりと序盤で父親がいなくなり娘がさがし始めるが、犯人の正体を隠すような演出もなく、体当たりで犯人にぶつかっていく娘の無鉄砲な様子を見て、これ最後まで展開持つかなと思ったが、それは杞憂に終わった。映画のメインで描かれているのは犯人と父親の過去であり、予告からは想像もつかない展開が続くとても面白い作品だった。
そしてこの作品は単なるサスペンス映画ではなく"安楽死"という重たい裏テーマがあるメッセージ性の強い映画だった。主人公の妻は難病ALSに罹り、「死んだほうがまし」「殺してくれ」と懇願するほど追い込まれていた。そして妻を楽にしてあげたいという思いから、連続殺人犯に殺人を頼んでしまう。どこにでもいる平凡な人間だったはずの主人公は妻の抱える難病によって何かが壊れてしまったのかもしれない。特に妻のツイートを見て、何も言わずに妻の首をまっすぐに絞めにいくシーンはとても印象的だった。大好きな人に死にたいと懇願されるほど辛いことはこの世にあるのだろうか。
そしてこの映画はとにかく山内の演技がものすごく良かった。設定としては過去の虐待経験から女性に対する感情が捻じ曲がり、特殊な性癖になり、殺人を繰り返すようになったといったところだろうか。というのも特に山内の過去の描写はなく、その猟奇的ぶりは細かい表情や言動の演技で表現されていた。特に「本当に死にたい奴なんて今まで1人もいなかったよ」というセリフがとにかく怖かった。主人公の妻は最後は生きたいと願っていたのかもしれないと分かった瞬間背筋が凍った。
物語の終盤で山内を殺しそのまま物語が終わるかと思ったら、そこから更にもうひと展開あったのがとても良かった。まさに"ミイラ取りがミイラになる"展開で、Twitterでメッセージをやり取りしてるシーンはとても切なく、恐怖を感じた。娘のやるせない涙や、ピンポン球が床にはねる音など演出がとても素晴らしかった。

物語全体を通して全てを描き切らず、見ている人の想像に委ねる余白の部分が多くて見ていてとても面白かった。

一点、過去の回想から現在に繋がるところの繋ぎ目がとても曖昧で見ていて少し混乱した。回想に入る時は13ヶ月前というテロップが入っていたからこそ、逆に分かりにくく感じたのかもしれない。


展開 関心度speed 0.8
おもしろさ fun 0.8
設定 構成 story 0.8
映像音楽 art 0.7
好みlike 0.7
Jack05

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