とりん

からかい上手の高木さんのとりんのレビュー・感想・評価

からかい上手の高木さん(2022年製作の映画)
3.9
2022年66本目(映画館31本目)

2018年に第1期が放送され、2022年1〜3月には第3期が放送されているアニメ「からかい上手の高木さん」の劇場版。
原作は山本崇一朗の同名コミックをはじめ、派生作品が複数存在している。
タイトル通り高木さんが隣の席の男の子西片をからかうという日常を描いている。"からかい"と言うと少し嫌な印象もあるかも知れないが、本シリーズで描かれる高木さんの"からかい"はほのかな好意から生まれているものであり、決して嫌な感じは一切ない。
むしろ微笑ましいというかニヤニヤしてしまう。からかいを受けている当の西片はいつもからかわれる高木さんに対抗心を抱き、いろんな勝負を仕掛けては、巧みにからかわれたりして、返り討ちにされたりする。でもそんなやりとりの中で西片の方にも少しずつ好意の色が見えはじめたりして、時にドキッとしたりもしていて、その関係性が見ていてたまらない。
これまでも明らかにお互い好意がありそうだったにも関わらず、これまで動きそうで動かなかった西片と高木さんの恋模様もついに動いた感じがした。

そのキッカケとなったことも子ども時代ならではというか、子どもの感性だからこその部分はあって、そこから一気に発展するのかという驚きもあったが、こういうときの西片のストレートさがやはりカッコいい。いつもはぐらかしたり、モジモジしたりしてしまうのに。
テレビアニメシリーズでは中学1年生から描かれてきたが、本作では中学3年生の夏となっている。
基本的には高木さんと西片の2人を中心に描いているのだけれど、もうひとつ女の子3人ミナ、ユカリ、サナエという別視点の3人の話もある。こちらも別途原作があり、アニメや映画版ではうまく組み合わせて映像化されている。
中学最後の夏休みだからこそ、一度しかない夏、来年には高校になり別の進路に行く子も出てくる、そんな中のノスタルジーな感じや青春の雰囲気がよく表現されている。卒業アルバムの写真だったり、夏祭りだったり。
本作の舞台となるのは香川県の小豆島、テレビアニメシリーズの時も映像は綺麗だったが、劇場版になるとそれが一層増す。今回映画で描かれる"虫送り"という小豆島で実際に行われている伝統行事のシーンなんかもあるのだけれど、その火の感じや一面に広がる田んぼの景色とかが本当に綺麗。景色や視界が拡がる感じは劇場版ならではだし、アニメ映画であってもこういうのを大スクリーンで観れるのは嬉しい。音楽もテレビシリーズよりかなりスケール感増してたと思う。

テレビアニメの劇場版なのでもちろんその視聴者向けなところではあるけれど、本作だけ観ても割と楽しめる内容ではあるのかな。そもそもが日常を描いている部分が強いので、少しのキャラ設定と背景さえ序盤で掴めれば特に初めて見る人でも楽しめるようになっていたと思う。ただこれまで観てきた人の方が何倍も楽しめて、特に後半はやられるかな。

とにかく本シリーズは高木さんと西片さんの"からかい"を通した2人のやりとりに癒され、時にキュンとさせられるのが魅力的な作品。年甲斐もなくキュンとさせられてしまったよ。それくらい高木さんにはテレビやスクリーンの前でもしてやられてばかりで、可愛すぎる。もちろん2人以外のキャラクターも個性的でコミカルな子たちばかりなので、そちらの部分もぜひ注目してほしい。

テレビアニメシリーズでもエンディングで青春の名曲たちを高木さんの声を演じる高橋李依がカバーしたものが使われているのだけれど、劇場版の本作でもそれは変わらず。しかもテレビシリーズの際も1,2週間おきに曲が変わるのだけれど、それも同様に劇場版で1週間おきに変更するという面白い試みもしている。私が観たのは2週目だったのでBUMP OF CHICKENの「天体観測」だった。夏の物語を描いた本作には合っていたと思う。でも前週はI WISHの「明日への扉」だったからあのシーン考えるとそっちもよかったなぁ。
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