バナバナ

ムクドリのバナバナのレビュー・感想・評価

ムクドリ(2021年製作の映画)
3.8
突然死症候群だったのか、幼い子供を1年前に亡くしたリリーとジャック夫妻。
夫婦二人でこの悲しみをリリーは乗り越えたかったのに、ジャックは自殺未遂を起こして、今は精神病院に入院中だ。

リリー自身も未だ心の傷が癒えていないので、周囲の人達も、まだ普段のリリーではないことには気付いており、夫の病院のカウンセラーから、昔は大学病院で優秀なカウンセラーだったが、今は近くで獣医をしている医師を紹介される。
その頃、気晴らしに庭に菜園を作ろうとしていたリリーに、庭に住み着いたムクドリが巣を守るためにやたらと攻撃してくるので、その相談も兼ねて獣医のところに行ってみると、
昔取った杵柄で、獣医はリリーも問題を抱えていることにすぐに気付くのだった…。

この獣医師が、髪が真っ白になったケヴィン・クラインが演じていて、この医師の情報は分からないが、この人自身も過去に色々あったのかなと思わせる、さすがの存在感でした。

日本でムクドリというと、都会の木に群れ(集団)で住み着き、糞公害が凄いので、縄張り意識が強いというのならカラスの方が合っているのではと思うのだが、
普段は集団で暮らしているムクドリが、なぜか一匹で子育てに奮闘している姿をリリーと重ねたかったのかな。
リリーも鳥と敵対していたが、獣医にムクドリの説明を受けると、今の自分の姿と重ねる様になる。

玄関先のベンチで、亡くなった子供の小さな靴下を眺めていたリリーの姿にグッときてしまった。
メリッサ・マッカーシーってコメディアンなんですね。
今までもどこかで観たことがあったのかも知れないけど、全く知らない存在でしたが、今作では自分も心の傷を抱えているのに一人で耐え忍んでいる、等身大の女性の姿をリアルに演じられていました。

夫も別にリリーを責めている訳ではなく、自分をずっと責めて鬱になってしまったんだけど、あんな態度ないやん!
自分の殻に閉じ籠ることそれ自体が独りよがりだった、ということに気付いてくれて良かったです。
まあ、この夫は気持ちを整理するのに、これだけ時間がかかる人だった…という感じだったけど。

後半のムクドリ絡みのシーンは、人間に都合が良すぎる展開でしたが(鳥からしたら災難でしかない)、また現実に脚を付けて歩みだすための象徴、ということで、許しますw。
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