荒野の狼

小さな修理屋の荒野の狼のレビュー・感想・評価

小さな修理屋(2021年製作の映画)
5.0
まるで異なったジャンルの映画を同時に3本観たような、それでいて全く食い過ぎ感は残らず満腹。原作は舞台劇で、『スルース(探偵)』もそうだが、これってもしかしたら舞台劇?って思わせる塩梅(あんばい)の作りになっている。つまり映画なのにドラマツルギー(芝居仕立)を堅持していて、西洋人と云うのは実に戯曲の映画化というのが、薄味じゃなく濃くもなく上手い(美味い)なあと思う。我が国の、たとえば原作アニメ実写化のお粗末さとは比すべくもない。少しは見習ったらどうかと思う。というか、こういう作品を見ていたら、とても映画なんて撮れなくなると思うので、見たこともないのだろう。ともかく大作でもないのにきっちりスッキリ、映画という一品料理(アラカルト)を味わう事ができる娯楽作品だ。いったい何が始まるんだろうと思わせる直訳タイトル(原題Small engine repair)も魅力的である。前振りが長いとの感想もあるけれど、この前振りこそがこの映画の醍醐味でしょう。終盤の展開とエンディングは鍋料理の〆(しめ)よろしく、実によく練られた脚本である。まさにダールの短編を映画で見せられたような、アペリティフ付きの料理を頂いた気分になりました。頑張ってくれよ、日本の娯楽映画。
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