このレビューはネタバレを含みます
東部ドンバスでの戦争を背景に、主人公の外科医が人生と家族を取り戻す話。
同時上映の『アトランティス』と比べると明確な劇映画だが、同じ様に移動シーン以外はカメラは動かず、長回しで、多くがワンカットワンシーンで撮影される。
最近のアート系の流行と言えば流行だが・・・好きではない。
確かに、時に宗教画を想起させる美しく静的な画面作りは素晴らしいし、オープニングのペイントボール場での演出は引き込まれる。窓から見える幻想的な夜景から、監督が鉄塔とか工場とかの風景好きなのも伝わって来る。
各シーンに様々な意味や主張を込めているのは分かるし、長回しのカットの中で、映像として登場人物たちの心の変化や空気感を表現したいのも分かる。
でもクドい長回しは、それはそれで説明過多なんだよな・・・そして物語のダイナミズムを欠損してしまう。
色々と詰め込みすぎだし、三回で良いところを五回やって見せたりする様な事は悪手。90分弱で描ける事を2時間強で描く必要は無い。
フレームの中に写っている事を見て、考えて欲しいと監督は言っているが、この作品は観察系ドキュメンタリーでは無いからね・・・あくまでも作られた劇映画なので。
それと、国の内外で目を背けられている隠された戦争と、そこで起こっている事、無視されている傷付いた人たちを描きたかったらしいが・・・『アトランティス』に引き続いて出演したアンドリー・ルィマルーク(元ジャーナリストで、役と同じ偵察部隊長として従軍経験あり)演じる妻の再婚相手を殺して、自分が入れ替わって家族を乗っ取る(取り戻す)話に成ってしまっているのは良いのかな!?
窓にぶつかった鳥は分断されたウクライナの状況を比喩的に表しているのかな・・・と初めは思ったが、だんだんと帰ってきたアンドリーの魂に思えてきた・・・死骸を燃やしたら魂が解放されて、また帰ってこないか?みたいな・・・。
ところで、性器と傷口にボカシが入るのは、日本での仕様なのだろうか?