クリーム

リフレクションのクリームのレビュー・感想・評価

リフレクション(2021年製作の映画)
3.9
前作『アトランティス』は、PTSDを抱えて生きる話。今作は、PTSDを発症して行く過程が描かれます。ウクライナの戦争の話なので、フィクションではあるが、引き込まれるし生々しい。心の苦しくなる作品でした。
2014年、ロシアのウクライナ侵攻(2014~のクリミア半島侵攻)を題材にしています。戦場に赴こうとした外科医セルヒーが捕虜になり、癒えない傷を抱えたままキーウに戻ってからの様子を描いた作品です。





ネタバレ↓
(あくまでも個人の解釈です)




ウクライナ人の外科医セルヒーは、軍医として戦場に向かうのですが、道を間違えた事で拘束され捕虜となります。セルヒーは自分も拷問を受けますが、外科医だった為、自分以外に拷問を受け瀕死の捕虜達の死亡確認の役目をさせられ、死んだ捕虜の火葬までさせられました。ある日、元妻の恋人アンドリューが捕虜として、既に酷い状態で運ばれて来ます。アンドリューを気の毒に思ったセルヒーは、彼の手で死なせてあげました。本当に惨く陰湿な映像で気が滅入ります。恐ろしくて目を背けたくなる映像でした。捕虜交換で何とか生き延び帰還したセルヒー。
戦場から帰れば、街では普通の生活が営まれている。 広場で娘にそり滑りをさせたり、乗馬教室に連れて行ったり、誕生日にドローンをプレゼントしたり、普通の生活をする。日常と戦場のあまりの違いに帰還兵たちの負う心の傷、そこからどう生きて行くのかを突きつける。
鳩が窓にぶつかって出来た汚れが拭いても落ちないのに雨で、綺麗に流されて行くシーンは、自然に身を任せるしかないと言っている様に見えました。
2022年にロシアが急に侵攻して来たわけではなく、もっと前から、継続してウクライナは侵攻され続け、帰還兵達はPTSDに悩まされ続けているとセルヒーを通して、表現されている様に思えました。ウクライナの現状を主人公を通して伝えて来る、感慨深い映画だと思います。

※最後のシーンが、ちょっと解らなくて、元妻、娘、セルヒーが、揃ってゲームみたいなものに参加していて、気配だけで家族を当てる家族愛っぽいものだったが、軍事練習っぽくもあった。あれは、何だったんだろう?これが、解り易ければ、もっと良い作品になったと思うんだけど…。帰還したら、冒頭のサバゲーも含め、ゲームの様な役に立たない訓練しかしていないのを皮肉っているって事なのかな?
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