“ペンは凶器…そして人を滅ぼす”
文学に魅せられ詩人になると誓った一人の若者。彼は欺瞞、恥辱、強欲に塗れた社会の汚さを知り、溺れていく。
人間の成功とは一瞬の輝きではない。傲慢さを纏ってしまえば全て水の泡。権力にはどう足掻いても敵わないのだ。
予告から興味津々だった本作。
期待に違わぬ良作でした。
序盤こそ登場人物や背景設定の理解に追いつくのでやっとでしたが、主人公のリュシアンが新聞記者として働き出してからは前のめりで作品に食いついていました。
この青年はいったいどういう運命を辿っていくのか…彼自身のその後が気になって仕方ないんです。
19世紀前半のフランス・パリが舞台。
田舎から大都会パリに出向いてきた夢見る赤子のような青年。
とにかく真っ直ぐで、田舎でまわりに絶賛された自分の詩集を片手に詩人になることを夢見て行動するわけですが、彼の理想とは程遠いほど欺瞞でいっぱいの社会。
キーマンとしてナタンというグザビエ・ドランが演じる作家がおり、彼が映画の語り手となっている構成。
なぜ彼がリュシアンの物語の語り手となっているのか…それが最後の最後につながって「なるほどー!」と。
あとは本作では重要な役回りのルストーを演じるのは『アマンダと僕』で主人公を演じたバンサン・ラコスト。
彼がとても良かったですねー!
他にも登場人物がたくさんで、いずれもきちんとした役割を担っているのが良かった。
149分の長尺としての長さはある程度感じながらも、その長さが苦痛にならない心地良さがありました。まぁ作品としては切なさがどんどん募っていくような物語でしたが。
良作でした!
〈キャスト〉
リュシアン・ド・リュバンプ(バンジャマン・ボワザン)
ルイーズ・ド・バルジュトン(セシル・ドゥ・フランス)
エティエンヌ・ルストー(バンサン・ラコスト)
ナタン(グザビエ・ドラン)
コラリー(サロメ・ドゥワルス)
デスパール侯爵夫人(ジャンヌ・バリバール)
ドリア(ジェラール・ドパルデュー)
デュ・シャトレ男爵(アンドレ・マルコン)
アンドッシュ(ルイ=ド・ドゥ・ランクザン)
ラウラ(デニッセ・アスピルクエタ)
サンガリ(ジャン=フランソワ・ステブナン)
※2023年新作映画54本目