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ロスト・ドーターのyukoのレビュー・感想・評価

ロスト・ドーター(2021年製作の映画)
4.0
 とても難しいテーマ。
レダという女性とその母、そしてレダの二人の娘達、3代にわたる母と娘のあり方。
 レダの母親は学が無く、インテリジェンスに欠ける育て方をされたと思われる。
頭の良い少女だったレダはそんな生活から抜け出す為に、必死で勉強をした。
 早くに結婚をして娘をもうけたものの、彼女の勉強時間は子育てに奪われる。
容赦ない子育てのストレス。世の中の母親全員が漏れなく体験する事。
レダが言う「私 母性が無いの」
そもそも母性神話なんてものはどうかと思う。
痛い思いをして産んだ我が子はそりゃー可愛い。
でも母性なんて物は泣いたり怒ったり怒鳴ったり、時には八つ当たりして頭の一つもペチンと叩いたりしながら、子供と共に育っていく物だと思う。産んだら全ての女性に初めから備わってるもんでも無い。
 女の子は自分の母親の事を恐ろしい位見ている。お人形遊び、ママごと遊びは自分の母親のしている事そのまま。
レダの娘は母親の心がそこに無いのに気づき、傷ついた時、人形を虐待の対象にする。
怒ったレダは落書きされた人形を窓から投げ捨て、粉々に砕けてしまう。
この瞬間、レダは母親である事を捨てる。
 ビーチで出会ったニーナとその娘。
ニーナと父親の喧嘩を見ながら、娘は人形に噛み付く。
レダはその親娘を大学教授になった今も嫌悪感と罪悪感から逃れられない自分の姿と重ねる。 
人形を盗み、落書きを消し綺麗にしてやり抱きしめる。
ニーナの娘の代わりに、そしてビアンカの代わりに。そして自分自身の代わりに。
ラストにビアンカとの電話の会話。
何気ない母娘の会話の様…でも母親に対して底知れぬ冷たさを感じさせる。
 ビアンカが母を許す事は決して無いし、レダが自分を許す日も決して来ない。
母親とはそういうものだから。
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