金宮さん

ロスト・ドーターの金宮さんのネタバレレビュー・内容・結末

ロスト・ドーター(2021年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

母性を持てない女性の苦悩を描く。

母親への過剰期待はいまだ社会にはびこっており、色々な問題の根源要素ですらあると思います。なので、今作のコンセプトはとても共感するものです。

でも残念ながらこの主人公に欠けているのは「母性」ではなく「社会性」だと感じてしまいました。「大家族やハイカーへの偏見」「それらに対する高慢な態度と手のひら返し」「若者に文学引用マウントをするスノビズム」このあたりが常にチラつくキャラ造形となり、ただの人間嫌いに見えます。挙句の果てには、不倫による枕営業ぽい臭わせまで。このあたりが主題の大きなノイズになっている。

特にげんなりしたのは明確に「子どもが嫌い」と言っちゃう場面。不倫相手とのピロートーク中にニヤけながら言っちゃダメ!個人的に言霊的な考え方ってあると思っていて、潜在意識を言葉にするということは、そちらに自分を持っていく強い推進力を持つきっかけとなります。この場面における発言のタイミングや表情、そしてそこから連想する「不倫ハイ」はかなりいただけなかった。

あと、主人公が妊娠出産を決意した過去が語られていないのもなー。それを行間に頼るのは観客への負荷が大きいです。

「自分に"母性がない"と感じてしまっても、それは普通のことだよ」はとても大事なメッセージ。でもそれは共感のできる主人公に言わせて初めて効果があります。

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思い出すのは『カモン カモン』内における『ジャクリーン・ローズ著 母たち:愛と残酷さについて』の引用。これは、本当に目から鱗でした。(感銘を受けて画面一時停止しながらメモっちゃったほど)

"母性とは我々の文化において、完全な人間とは何かという葛藤を埋める場所だ。個人や政治の失敗あらゆる問題への究極の生贄であり、すべてを解決するという不可能な任務を負っている。我々は母親に、社会や我々自身の厄介な重荷を押し付けている。母親は人生の困難な暗部に直面せざるを得ないのだ。なぜ、物事を明るく無垢にするのが、母親の役目なのか。"
金宮さん

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