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ロスト・ドーターのmasatのレビュー・感想・評価

ロスト・ドーター(2021年製作の映画)
2.9
イイ映画はよく解らないものに向かっていく・・・
と、かつて、とある監督が言っていた。
そんな思いに集まる輩は、よく解らないけど、何か感じるものがあって、一丸となっていくのだろう。
監督の異様な執着の成せる技、なのだろうか?確かに、企画段階ではよく解らなかったであろう作品が、かつてなかった世界を観せてくれる、そんな体験は、油断しているときに限って、やって来た。

さて、
と言う事を心得てる奴がたまに居るから、映画を観ることはスリリングだ。

いつの間にかノーラン・バットマンの一番オイシイ・ヒロインの座を手に入れた奥目がちな歪顔の女優が、突如、メガホンを取った。しかも、世界最古の映画祭ヴェネチアにて“脚本賞”まで掻っ攫ったんだから、期待は高まる。

しかし、みんなバカンスが好きだ。
旅に出れば、心機一転、それまでがリセットされ、新たな感情が湧き上がるのだろうか?
生まれてこの方、ずっと不思議。

そんな地を旅する熟女。
熟した感じが近年堪らないコールマンが行く。
腐った果物、五月蝿い蝉、痛い松ぼっくり、果ては人形の口から這い出る海虫・・・やがて下腹に痛みを抱えて。

前半は、一体何へ向かっているのかが解らずも、異様な雰囲気に引っ張られ、のめり込む。
しかし、結局、人間は過去。
過去から逃げられない。へばりついて離れないかつての所業が、隙あらば追いかけてくる。
ああ、結局、そっちか、そうでしょうなあ・・・と思っていると、
ラストに現れる亡霊が“母性”と言う名前であった。母性という亡霊が最後、熟女に追いついてしまう。しかし、一度も纏った事がない熟女は何を見るのだろうか?

なかなかのクライマックスが用意されていたが、トドメが弱かった。
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