なにこの映画、、、スゴすぎる。
ずっと流れる不穏な空気と、ヒシヒシと伝わる緊張感。乾いた牧場の風景と、息を飲む大自然にひたすら魅了された。丁寧すぎる人物描写によって、善にも悪にもなりうるキャラクターたちの構成が素晴らしい。これまで積み上げてきた全てを覆すかのようなラストシーンは声が出るほど痺れる。
そもそも現代のアメリカに蔓延るマッチョイズム精神を、男社会の「西部劇」によって崩壊させるという衝撃。フェミニズムやジェンダーレスを逆手にとったストーリーが堪らない。
同性愛者の主人公が「有害な男らしさ」に囚われて、その男らしさからは程遠い位置にいる女々しい少年をいじめ続ける…。これまでLGBTQ映画では「主役」として描かれることのなかったであろうキャラクター像だと思う。
ジェーン・カンピオンの長編デビュー作にして最高傑作の『ピアノ・レッスン』に勝るとも劣らないクオリティ。アカデミー賞では12部門にもノミネートされて、監督賞だけの受賞だったのが信じられない…。お世辞抜きで2021年最高の映画だった。