ツクヨミ

パワー・オブ・ザ・ドッグのツクヨミのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
1.8
前時代的な硬派な男とその男に影響を受けまくる周りの人々の人間ドラマ。
牧場主のフィルは牛を率いて仲間たちと放牧の日々を送る。そんな折に彼らは女将と息子が経営する場末のレストランを訪れる…
ジェーン・カンピオン監督作品。2022年アカデミー賞で作品賞含む7部門ノミネートで監督賞を受賞した今作、監督の作家性を見たいがために鑑賞したがなかなか人間性や人間関係に光を当てた人間ドラマという印象だった。
舞台は1925年のアメリカ.モンタナ州の田舎町ということもあってか、ロングショットで見せる雄大な風景が美しい。今作は都会は一切見せず自然豊かな竹林や馬を走らせる荒野の力強さが息付いているようだった。そしてその風景に人物が乗ると絵画的な画力に押され、ビジュアル力強い映像に呑まれる。
そして内容に関して言えば今作は最早昼ドラと言っていいほど、姑ないし兄が弟の妻と息子に圧をかけまくる話だ。主人公のフィルは弟の妻の息子ピーターがなよなよしていて女々しいといびり、それを皮切りに弟の妻ローズに小さな嫌がらせを重ねていく。するとローズとピーターの親子はフィルに対して恐怖の感情を持ち始め、ローズに至ってはトラウマ的な症状がでてアルコールに溺れるようになっていく。1人の男に狂わせられていく親子の悲劇というべき前半はなかなかに胸糞悪い印象だ。
それに対し後半は主人公フィルが何を思ったかピーターに乗馬やカウボーイテクニックを教えていくのだ。フィルに関して言えば正直何を考えているのかわからない見せ方のため、急に手のひらを返したような所業をしていきかなり困惑した。姑みたいな行動をしていた兄がいきなり自分の意思をピーターに継承していく。私の感性が弱かったのか、結局今作の魅力をあまり理解できなかった印象だ。
結局昼ドラ的な悲劇か男の強さの継承なのかよく分からずどっちつかずな印象を受けた。しかし監督の作家性が人間の感情や性格を嫌らしいまでに炙り出すものなのかもしれないと感じた点は良かったかも。余談であるが、個人的に大好きなトーマシン・マッケンジー扮するローラのウサ耳仕草が可愛すぎ。個人的に1番のハイライトはそこだった笑。
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