かわさき

パワー・オブ・ザ・ドッグのかわさきのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.3

ジェーン・カンピオンはマジで「映画」が上手すぎる。こう書くと斜に構えた論評っぽく聞こえてしまうけど、映像・プロット・セリフの構成力は現役の映画監督の中でも随一だと思う。

明確に「それ」と描写も断言もされていないが、印象的なシークエンスの連続とセリフ回しで観客に「それ」と分からせる。1920年代のスーパー・トキシック・マスキュリニティおじさんであるフィル(ベネディクト・カンバーバッチ)は、年季の入ったミソジニーを隠そうともしないが、その理由が言外のトーンやグラデーション、行間によって明らかにされる。ちょっとこれは凄すぎる(笑)。あまつさえ、本作は余韻まで残す。受け手に委ねる謎の塩梅が非常に心地よい。いやはや、考えれば考えるほど構成が完璧な作品である。

そして撮り方がヒッチコックばりのサイコスリラーなので、正直ずっと怖かった。銃も爆弾もなしでこれほど心臓を刺激できるのも、やはり映画の天才のなせる業か。
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