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パワー・オブ・ザ・ドッグのandesのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
3.5
カンバーバッチなので、割とすぐフィルの性質には気が付く。ただ、単純なジェンダー映画にならなかったのは良い。現代的な映画であるが、普遍的な「不寛容」「無理解」を根底に「強さ」の意味を突く作品。
劇中ほとんどがメタファーで構成されており、明確で直接的な表現をしていないので、解釈も好みも分かれるだろう(反面、批評家受けは良い)。明らかなのは、フィルとピーターは対になるキャラクターであり、根底はよく似ている。しかし、自らの性質をどう捉えるかが徹底的に異なるのが面白い。自分の性(さが)を「コンプレックス」と感じるフィルにはピーターの強さ(彼は自分を受け入れている)は見えないのである。
個人的には1925年という時代設定にも注目したい。既にニューヨークでは摩天楼がそびえ立つ近代であるのに、フィルはマッチョなカウボーイの生活を(学歴があるにもかかわらす)選んでいる。既に彼が憧れる“強さ”は時代錯誤なのである。反面、ピーターは知性、知識など頭で勝負している。
タイトルも含めていくらでも語れる佳作。唯一惜しいのは、どこか監督が解釈を任せる造りをしすぎたことで、もう少し主張があった方が良かったと思う(もちろん、主張はリスクであるし、責任が伴う)。
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