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パワー・オブ・ザ・ドッグのkanokoのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
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23.0518
1920年代半ばのモンタナ州を舞台とした、近代ウェスタン。珍しい設定です。
予告ではストーリーをぼかし、得られる情報はキャストと不穏な世界観のみ。

昨年も観たんです。
エッ高圧的な牧場主ベネさんによる俺様暴君西部劇!!?と大興奮し全く冷静に観れませんでした。

初回感想:
・臭そうなベネさん最高。ベルボトムめちゃくちゃ似合うね!
・2階から嘲笑う小姑ベネ様…楽しそうで何より。罵倒がエエ声ご褒美すぎ。
・こんなの未亡人じゃん…俺が絶対守る(守れない)(泣いた)

2回目感想:
この作品、今気づいたのですが主人公不在なんですね…!誰にも肩入れせず、淡々と出来事を綴り、かつ散りばめられた伏線による濃密な人物設計が秀悦です。
観る側に多く想像の余地を与え、よりリアルな人間考察が楽しめます。
4人群像劇となっていますが、やはり見どころは後半でフォーカスされる、ベネさんこと高圧的な牧場主・フィルと弟妻の連れ子・ピートの関係性の変化ですね!魂が同じでありながら対立する2人、ラブロマンスやと思いますね。
フィル、ほんとはお花好きでしょ…こんな生き方を強いられる世界なんて俺が連れ出してやる(泣)(泣)

映像では「窓」がとても印象的でした。登場人物の関係性や立ち位置を窓を使った演出で比喩的に表現するカットが多く見られます。
また、張り詰めた人間ドラマの合間に映し出される雄大な自然が緩急となり、心地よい仕上がりとなっています。

不穏な音楽がぴったりな、静かな映画です。誰に感情移入するか、によって結末に抱く感情が異なるのがこの映画の面白いところですね。
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