ピロシキ

あのことのピロシキのレビュー・感想・評価

あのこと(2021年製作の映画)
3.6
「あなたは〈彼女〉を、体験する」という宣伝文句はあながち間違っていない。カメラが常に彼女のそばを離れず顔面もドアップでひたすら追い続けることによって、視点は一人称になる。彼女が見るもの感じるものすべてが、スクリーンに映る。彼女が下す「中絶」という決断と、その一部始終も。都合よくスキップしたり、目を背けたりすることはできない。それらはすべて彼女が、彼女「だけ」が体験することだからである。彼氏はいたわりもせず、世間体ばかり気にして遠ざかる。友人は一人また一人と離れてゆく。なぜ彼女だけがこんなにも苦しまなければならないのか。そして肉体も精神も追い詰められた彼女の苦悩を誰一人知ることなく、日常は続いていく。昔話ではない。今この瞬間の話である。美談にできるわけなどない…。
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