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あのことのmakoのレビュー・感想・評価

あのこと(2021年製作の映画)
4.1
《あなたは〈彼女〉を、体験する。》
◎82点

1960年代、中絶が違法だったフランス。大学生のアンヌは予期せぬ妊娠をするが、学位と未来のために今は産めない。選択肢は1つ-。
たった一人で戦う12週間が描かれる。

フライヤーに〈観る〉のではなく、彼女(アンヌ)を〈体感する〉、と書いてありましたが、本当にそんな感じ。
アンヌの絶望、焦燥感などを体感する事ができました。

選択肢が1つしかないなんて辛すぎる。
その頃の中絶は重罪で、中絶した本人やそれに加担した医師も罰せられるので、自分でどうにかしなければいけない。

性行為は2人でするのに、妊娠したら女性だけが責任や問題を負わないといけないのはおかしい。
アンヌは、貧しい労働者階級に生まれたが、飛び抜けた知性と努力で大学に進学し、未来を約束する学位にも手が届こうとしていたのに、それが妊娠で失ってしまおうとしている。

その前に妊娠しないようにすればいいのだが、本作はそこが問題ではない。
中絶ができない時代、妊娠したらどうなるのか?
1人の未来ある若い女性を通して、アンヌ目線でその世界を見せられ体感させられる。
衝撃的なシーンもありつつ、アンヌを応援していた。
痛いシーンが何度も出てるが、それでもアンヌから目が離せない。
いろんな感情が沸き起こり、スリリングさもありました。

原作はアニー・エルノーが、自身の実話を基に書き上げた「事件」の映画化。

アンヌ役のアナマリア・ヴァルトロメイの身体を張った演技は素晴らしかったです。
本作でセザール賞を受賞。



字幕翻訳: 丸山垂穂
観客 1階席 ?、2階席 5人
劇場鑑賞 #6
2022 #6
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