鎌谷ミキ

あのことの鎌谷ミキのレビュー・感想・評価

あのこと(2021年製作の映画)
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【"望まぬ妊娠"に対する自己啓発映画】

[あらすじ]ネット改良版
アニー・エルノーが実体験を基に書いた小説『事件』を映画化。中絶がまだ違法だったフランスで望まぬ妊娠をした大学生アンヌ(アナマリア・ヴァルトロメイ)が孤独に戦う姿を描く。

[レビュー]
U-NEXTの新作洋画も侮れないな、観たかった作品が続々と。2021年ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いた作品とのことで📎してたぐらいの知識で観たら、なかなかにキツい話でした…

これをスリラーにしてしまうジャンルわけもどうかと思うんだけど…
妊娠は自己責任。今もそれは変わらない。しかし中絶が違法だとしたら、こんなにも世界が違う…女性だとかなりの精神的苦痛をしいられます。食欲失せました…男性の見方としては、相手を望まぬ妊娠させてしまったら女性の肉体的苦痛はこれほどまでとわかりやすいだろうと思う。それぐらい、容赦ない描写。

アンヌなんですけれど、結構自由奔放なんですよ。見たらわかると思うんですけど、何%か感情移入できない描写が出てきます。実体験の原作が元なので欲望に素直といってしまえばそうなんでしょうが、このアンヌが娘だったら説教しますね、間違いなく。「もう大学生だからって男にうつつを抜かしすぎ」

周りの男もなんと頼んない。"罪"になるから、友人も冷たい。確かにこの状況は八方塞がりかもしれないな…そこは同情するかな。唯一の理解者がかかりつけ医の男性ぐらいなのも、ね。

いってしまえば、一人では妊娠できるわけではなく。一方的に女性を責めるのも違う。「(避妊せずに)妊娠したオマエが悪い」という社会も問題ですよね。いろんな妊娠のケースもあるだろうし。アフターピルなんてなかった(その後1970年には使われはじめてたんだね、勉強になる!)頃はこんな状態だったんだなと。

うーん、本作を評価できるほど寛大ではないなぁ…どうしてもキャラと状況で"容認できない"んですよー。そりゃ、未婚の母にもなれない状況で妊娠したらホラーなのはわかるけれど、大事な命だからね。うんうん。つまりはそういうことなのかな"許せない"と捉える人が評価しているのだろか…なかなかに難しい、性に対するデリケートな話でした。
鎌谷ミキ

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