トゥーン

あのことのトゥーンのネタバレレビュー・内容・結末

あのこと(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

自ら堕胎を試みる能動的なものはアンヌの顔を映すが、中絶治療という受動的なものは治療しているほうのみを映す。終盤の展開に容赦がなくてしんどい。
アンヌの追体験を目指した本作は、アンヌを接写で常に映し出す。そのため、妊娠してすぐに中絶したがるアンヌ側の視点のみで、産まれるはずの子供目線から描かれない。つまり、アンヌの身勝手さ(妊娠してもセックスしてしまうし、すぐに子供を堕ろしたいと思い、子供の命についての道徳性が本作では一切言及されていない)が終盤まで大きかった。しかし、トイレの中で流産するシーンで、血まみれになったへその緒をしっかりと映し出すことで、アンヌと同時に壮絶さを体感する。あらゆる面で母親になれない未熟さを持つアンヌという人間が妊娠したらどうなるのかを余すことなく描ききっている。妊娠中絶を倫理的にではなく、別の視点から見たら、どうしようもない自分勝手な人間、でも解決の方法も相談もできず、妊娠を一身に背負わされる不条理を突きつけられてもいる女性から描く。倫理や道徳ではどうにもできない問題があった。
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