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あのことのEyesworthのレビュー・感想・評価

あのこと(2021年製作の映画)
4.4
【中絶の不可能性】

オードレイ・ディヴァン監督×アナマリア・バルトロメイ主演のヒューマンドラマ。アニー・エルノーの自身の実話を基にした小説「事件」が原作。

〈あらすじ〉
舞台は1960年代のフランス。学業優秀で前途有望な大学生のアンヌだったが、大事な試験を前に思いがけず妊娠が発覚する。当時のフランスでは中絶が禁止されていた。そのため、アンナは周りの友人や医者からも理解を得られず、すべてを1人で抱え込み、追い詰められていく…。

〈所感〉
すごく心を抉ってくる作品。子どもが産める女性ばかりではないが、女性であることの幸せと不幸せは紙一重だと思った。女性でないと生理が来ない恐ろしさは想像することしかできないが、身に赤子を抱え込んだまま学業に打ち込むことの不可能性を突きつけられる。中絶した人とそれに加担した人はすべて犯罪者となってしまう当時のフランスは異質に思えるが、それが当然の社会ではアンナこそが身勝手で頭のおかしい女であったのだろう。現代の視点から見ればアンナの考えは間違っていなかったろうが、時代に恵まれなかったとしか言いようがない。所変われば常識も変わる。その時特有の空気感・モラルを知る意味で意義深い一作だった。あと、裸の女性がいっぱい出てくる。
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