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コンペティションのsowhatのレビュー・感想・評価

コンペティション(2021年製作の映画)
5.0
【創作とは…芸術とは…役者とは…映画業界とは…。すべてをシニカルな笑いに!】


ドSで美しい若き天才女性監督が恐ろしくもカッコいい!
監督が俳優に課す演劇エクササイズが詩的で過激で衝撃的!
建築とインテリアとファッションが美しい!
名優二人の俗物性が笑える!
役者としての演技に対するアプローチが異なる二人は、繰り返されるリハーサルを通じて影響を与え合ってしまい、それぞれの才能と俗物性が剥き出しになっていきます。

映画の中で映画を作るという入子構造のメタフィクション。
監督も役者もスポンサーもすべてを相対化し揶揄して笑いの対象にしてしまうシンプルな脚本。
この脚本に応えた俳優陣の演技はすごい。
ほとんどのシーンが3人のリハーサルですが、まったく飽きさせません。
さらに脚本家の経歴がすごい。

アンドレス・デュプラAndrés Duprat、1964 年 4 月 18 日、アルゼンチン、ブエノスアイレス州ラプラタ生まれ。
職業、建築家、脚本家、アートキュレーター。
2005 年からアルゼンチン文化省のビジュアル アーツ ディレクターを務め、2015 年からはアルゼンチン国立美術館の館長に任命されている。
アルゼンチンが産んだ芸術モンスターです。
本作はアルゼンチンとスペインの奇才たちが集まり作り上げた珠玉の一本です。

年老いた大金持ちスポンサーの芸術に対する無理解。
行き過ぎた女性監督の芸術に対する狂気にも似た没入具合と奇妙な私生活。
名優二人の反発心と嫉妬心。
登場人物たちの愚かしさを描くコメディですが、その芯に鋭い批評性も隠されています。
特に劇中で女性監督が語るスピーチ。
「いい映画とはなんなのか?
ただ自分の主観で好きな映画をいい映画と言っているだけではないのか。
自分に理解できる映画をいい映画と言っているだけではないのか。
本当に大切なことは理解できないもののなかにあるはずなのに!」
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