シズヲ

モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーンのシズヲのレビュー・感想・評価

3.4
モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン!!タイトルの字面と響きがなんか好き。他人を操る超能力に突如目覚めた女性が精神病棟を抜け出し、ニューオリンズへと迷い込む。主人公がアジア系であることに加え、人種の坩堝であるニューオリンズを舞台にしているだけに黒人などの存在感も目立つのが興味深い。

韓国系女優のチョン・ジョンソを主役に据えた上で、極彩色の歓楽街やサイケデリックなサウンドと噛み合わせているセンスが秀逸。ハリウッド映画という土壌によるアジア系ヒロイン×ポップカルチャーの融和。要所要所で流れるハウス・ミュージックなどの電子音楽が映画にクラブ的なセンスを齎している。主役であるモナ・リザ(この奇抜なネーミングセンス好き)の雰囲気も印象的で、窶れた佇まいと無垢な愛嬌によるアンバランスな魅力がやはり良い。口数少ない彼女が時おり見せる挙動や表情は何だか可愛げがある。

そんなこんなで感性は素晴らしいけど、肝心の映画自体は案外凡庸。世界観のセンスに対して登場人物や脚本、編集が今ひとつ追い付いていなくて、何処かこじんまりと着地している印象。奇抜さを期待させられる筋書きの割には展開の突き上げに乏しく、描写やテンポで弾け切れていない。モナ・リザも愛嬌こそあれど物語を牽引する力に乏しいので、結局はケイト・ハドソン演じるストリッパー周りに途中まで映画の舵取りを明け渡していた節が否めない。総じてセンスを活かすためのグルーヴ感に欠けるので、終盤までは正直ピンと来ない部分も多かった。

そんな訳で言うほど“次世代のタランティーノ”感は無かったし、そこまで持ち上げられるほどの完成度でもないけど、確かにもう二、三作くらい経由すればもっと洗練されそうな雰囲気はある。そういう意味では今後に期待だ。そしてモナ・リザと少年の関係性には可愛げがあったので、映画終盤の逃避行は見てて楽しかった。というか逃避行周りでようやく物語に勢いが生まれた印象がある。
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