ツクヨミ

モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーンのツクヨミのレビュー・感想・評価

3.6
能力ものというより"ここではないどこか"を目指す逃避ものへ。
サイケデリックな予告編に釣られて見てみた。
まずオープニング、留置所みたいな精神病院の一室で何かに目覚める女、するといかにもイヤーな職員に小さな虐待をされたと思ったら相手を操る能力が解放する。能力使う時にやけにドリーズームしたりローポジションショットやキマッたディゾルブしたりといろいろと映像的に面白い。
そんな能力を手に入れた彼女がたくさん暴れ回りそうな流れなんだが、彼女は施設に収監された統合失調症者なのでそうはならない。もはや"悪い子バビー"の如く解放された世界でいろんな人々に出会うことで物語が進行していく話だ、夜のアメリカ感バッチリな大人の世界探訪みたいなテイストがやけにキマッてるし、パーティミュージックみたいなスコアが常になってるのがフリースタイルに拍車をかけるというか。精神疾患のやばいやつがちょっとずつ世界を知っていくとは言わないが、とりあえず自分を縛るものから逃げ別世界を享受していく様は現代のアメリカンニューシネマみたい。
なので人を操れる能力は物語を進行させるアイテムに過ぎず、自らを解放させる青春映画と言ってもいいぐらい。ちょっとした親切がいろんなミラクルを生み微笑んじゃうラストに辿り着く人間ドラマもあり、ハジけた見た目に反して意外にピュアな精神を持った不思議な作品だった。余韻もまた良い。
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