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アビエイターのmanamiのレビュー・感想・評価

アビエイター(2004年製作の映画)
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ハワードヒューズ(レオナルドディカプリオ)の伝記。これぞまさに波瀾万丈、事実は小説より奇なり。そりゃ映画化されるのも納得だわってほどドラマチックな人生ね。
彼が好きなもの、第二位は映画。常識はずれの製作費と人員と年月を費やして完成させたトーキー映画の大ヒットによってハリウッドでの名声を手に入れる。いやはや、笑っちゃうほどの独裁ぶりね。時代背景もあるとは言え、親から相続した莫大な遺産による財力あってこそ成り立つ傲慢さであることは疑いようもなく。よくもまあ、ついてきてくれる側近がいたものだわ。
映画関係の縁から彼が恋に落ちるキャサリンヘプパーン(ケイトブランシェット)がとっても魅力的。ゴルフ姿も、恋人が時速563キロから不時着したと聞いて大笑いするのもかっこいいな。やりたい放題のように見えて実のところがんじがらめでもあるハワードが、自然体で自由に存在している彼女に惹かれるのはよく分かる。
エヴァガードナー(ケイトベッキンセイル)も、やや違うタイプながら強くて自立した女性として描かれている。高価なプレゼントなんていらない、それよりも一緒に食事したい、ハワードと過ごす時間が欲しいだなんて、かっこいいし可愛いし、そりゃあ惚れちゃうよねぇ。
しかし彼が好きなもの、第一位はあくまでも飛行機。「空」への憧れを強く抱く彼は、映画で使用する戦闘機にも細かく指示を出し、速度記録を打ち立てたり、巨大な飛行艇を自ら操縦したり、しかも「80日間世界一周」に挑戦してる最中に無線で企業買収の支持を出しちゃったりもする。
ライバルとの激しい競争から政治的トラブルに発展して公聴会に出なきゃいけなくなったり、とにかく多方面で大忙し。こんな状況下なのに「気まぐれでプレイボーイでエキセントリック」でいられるなんて、むしろ凄いことなのでは。
ただ、その多忙さがまさに「心をなくす」という状態を生み出し、悪化させもしたんだろうな。「伝染病予防のための隔離 QUARANTINE」心の奥底から呪文を絞り出すかのよう。それは彼を救う魔法の言葉か、追い詰める呪いの言葉か。
何度も挟み込まれる強迫性障害の描写が恐ろしく、ディカプリオの熱演もあってこちらまで息が詰まる。強迫観念を振り払えず、強迫行為を止められない。繰り返してしまう、必要以上にやってしまう。ドアノブへの恐怖のために出られなくなるシーンは、彼の人生につきまとう閉塞感を象徴している。
だからこそフィクションと大空に魅了されたのか。側からは恵まれているように見えても、こんなにも満ち足りぬまま生きるなんて。幸福な人生のために真に必要なものって何なのでしょうかねぇ。

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