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なれのはてのCocoonのネタバレレビュー・内容・結末

なれのはて(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

フィリピンで貧困化してしまった高齢者が増えている。マニラのパサイに住む、そんな中の4人に焦点を当て追って行くドキュメンタリー。
さまざまなバックグラウンドや人生を送ってきた四者四様だが、老齢期になり病気を抱え、貧困で薬もなかなか買えず、日本に戻る金も頼る縁もなく、フィリピンで暮らし死んでゆく。
こうして書くと悲惨のように思えるが、生活は苦しくとも妻帯し子どももおり今の方が幸せだと言う人もいたり、金のある時は金目当ての人しか寄って来なかったけど、なくなって初めてフィリピンの人に助けられ、本当のフィリピン人がわかったと言う人もいた。

豊かな青春、惨めな老後というヒッピーを表した言葉があるけど、彼らも若い時は充実した日を送ったんだろう。人生はわからないものだ。そして人間の適応力はすごい。なんとかそういう環境でも、仕事を見つけて、周囲に助けられて生きている。
生活保障のある日本でそこそこの生活はしていて孤独に死ぬことと、彼らのように貧困ではあるけど常に周りに人がいて助けられ、近所の友人や子どもらと話し、そして死んだときに泣いてくれる人がいるのと。
そうは言っても日本もこれからどんどん社会保障は削られ、フィリピン化してゆくが、こうした互恵的な地域社会はすでに都市部にはほとんど残っていない。
彼らは多様性に乏しい日本社会において、一本しかないレールから外れてしまった。でも全員がそのレールに乗れる訳ではないし、実際現代ではそんなものは破綻している。しかし高齢者が主流だから、未だにその幻想じみた「あるべき人生」というものが共有され、理想化されている。
狂ってるのはどちらなのか?そうした問いを突きつける作品だと思う。

字幕がないので、そのわからなさをいい意味で追体験できる。
フィリピンに住んでいたが、その時の喧騒や暑さ、明るくおしゃべりな人々の感じ。またあの場所に迷い込んだような。それを鮮明に思い出させてくれた。
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