HaHa

土を喰らう十二ヵ月のHaHaのネタバレレビュー・内容・結末

土を喰らう十二ヵ月(2022年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

季節季節に手に入る食べ物を、丁寧に手をかけ料理する。その姿の、その手元の美しさ。四季折々の風景。
その季節の折々に描かれる死。妻の祭壇に花を飾り、ご飯を供へ、手を合わせるのは日常の生活に溶け込んでいるのだけれど、13年も経つのに遺骨を墓に納められない。勉さんの生活は妻の死と共に成り立っている。
そこに、妻の母親の死が入り込む。シンプルだけれど心尽くしの精進料理。集う人々は明るい軽口を叩きながらも、心から死を悼んでいる。日常の中で死を受け入れる自然な姿がそこにある。
その死に触発されて自分の骨壷を焼こうとした矢先、自分が死の淵に立たされる。改めて自分の生がここで終わると思った時、長年付き合った、そして一緒に暮らそうと言ってくれる恋人の申し出を断る。
改めて一人きりになって、死を覚悟したにもかかわらず、朝はやってきた。自然の営みは変わらず、生きとし生けるものはただ生を全うしている。生も死もありのまま受け入れて、ようやく亡き妻の遺骨を手放す決心がついた。この自然の中に。それは変わらず共にいるということでもある。
自分の元を去って結婚すると言う恋人の選択をそのまま受け入れて、今日も自然の中で、与えられた食べ物を丁寧に料理する。食べると言うことは生きると言うことだから。
季節ごとに移ろう空気感をもとらえた美しい映像。豊かな時間を過ごせた気分になる映画でした。
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