このレビューはネタバレを含みます
宗教抗争。
故郷に残るのも、移住するにも、
どちらも八方塞がりでなアイルランド人家族の話。
顔なじみばかりが暮らす故郷を手放せない母だったが、
プロテスタント派のリーダーの反逆に恐れて暮らすことに耐えられず、故郷を離れることになる。
モノクロの世界は、すでにそこには存在しない過去の世界として描かれ、
一方で演劇やカラー映画は、カラーの世界で描かれる。
冒頭とラストのいま?のベルファストの風景がカラーで描かれている点からもわかる。
宗教の違いで結婚できないかもしれない、というバディの声は、宗教の違いでなぜこれほど争わないといけないのか、今なお残る社会問題を純粋なまなざしをもって指摘される。
途中、スーパーマーケットへの襲撃に思いがけず参加して、環境に優しいという理由でバイオ洗剤を盗むものの、母に叱られ、返しにいくあたりが、小さなことでも倫理観を忘れちゃいけないという、家族のモットーがみえる。
その反対で、お前のものは俺のものという家族の伝統?が笑いをもたらしてくれる。
バディのキャラクターが生き生きとしてて、笑いと癒しをもたらしてくれる。しかしそれではまちなかの抗争は止めることはできない。
宗教問題の根深さと、それは意味あることなの?と笑い飛ばそうとする監督の姿勢が浮き彫りになっている。画面の構図が常に圧迫感があり、抗争からは逃れられない日常を視覚的にみせている。