友二朗

ベルファストの友二朗のレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
5.0
「いつも想ってる」

🌹2022 BEST🌹
もう流石に決まった。

20年間で観た映画で1番泣いた。夜と人生に浸りたくて歩いて帰ったが、その間もずっと涙を流していた。スクリーンから惜しみなく溢れ出る愛の深さに心が熱くなる。泣きながら家に帰って愛すべき家族に「ただいま」と言いたい。いつか終わってしまうこの平凡な日々にこそ命の全てを燃やしたい。

こんな父に、こんな母に、こんな人になりたい。このように生きてゆきたい。

熱を帯びた何かが心の内側から飛び出したがっている。物凄い余韻。

特に夫婦関係の美しさに感動して涙が止まらなかった。バディの両親も、対立や口論こそあるものの2人の持つ愛だけは揺るぎない。誰の前でも当然のようにハグをし、言葉にし、明日に向かって笑い合える。

家族団欒シーンの癒し要素っぷりは天下一だが、生涯の相手とは幸せや希望はもちろん、不幸や絶望こそを共に分かち合い、対等に語り合い、時には共に泣いて、共に歳を取りながら乗り越えて行きたい。美しさではなく醜さや苦しさを分かち合いたい人こそが、何があろうと愛を誓える人だ。自分以上に守りたい人だ。

こんな綺麗事を言い切る自分に恥ずかしさを感じず、むしろ好きでいれる。そうさせてくれた人生の映画、その名こそが「ベルファスト」

祖父母とバディが織りなす会話が常に面白く、またどこまでも深い。特に祖父が持つ少年性には羨望の眼差しを向けていた自分がいる。なんと穏やかで優しい強さだろうか。

「今もときめく?」
「お前を見る度に」
こんな風に相手を思えたらどんなに幸せだろう。また祖母の返すリアクションもまた長年共に人生を超えてきた"愛"そのもの。

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カラーフィルムからモノクロフィルムに移り、ここから始まる最初のワンカット長回し。この映像ももちろん素晴らしいが街行く人との会話、子供達の姿がたまらなく愛しくてつい笑顔になってしまう。

度々長めのカットが使われるがどれも素敵だったし『なるほどな』と関心できる。その瞬間をそのまま体験できた。

画角に関して、煽りと俯瞰の使い所が教科書のように丁寧だった。感動するバディの様子、父親の葛藤、それぞれ光源の位置も最高で観てて気持ち良かった。

モノクロなのにこの新しさは何だろう。撮影がとにかく良かった。もはや色彩が見えるし臨場感もヒシヒシと伝わってくる。

映画とショーに"色"が付く演出。
なんかめっちゃ泣いた。当時の人が受けた衝撃を体験したかのような、『映画って、エンタメって、芸術って、こんなにも素晴らしいのか』と魂の奥底に響くシーン。「ニュー・シネマ・パラダイス」のラストと同じ気持ちになった。

いやこれ面白い。映画の中の観客はモノクロで、映画の中の映画はカラー。この"逆の関係"になんとも言えない高揚感が湧く。

「チキ・チキ・バン・バン」のシーンは最高である。まず家族皆ってのが羨ましいし崖から飛ぶシーンの様子なんて感動しない訳がない。

冒頭スタッフクレジットからタイトルバックまで、北アイルランドの美しい街並みのダイジェスト。この一つ一つの構図が凄まじくて見入ってしまう。早くもここでやたら感動してしまった。ほんと素敵な街並み。

影響され易く、何にでも興味を持つバディに対して「うるせぇ」と一蹴するお兄ちゃん。この人物に対しての尺は少なかったが父親と2人での会話が歳相応に深い色を帯びていることでバディ、つまり少年の視る世界がよりカラフルに見える。冒頭の襲撃の際、机の下でちゃんと弟を覆うその姿にグッと来た。彼も彼なりにベルファストでの燦然たる青春があったのだろう。

父とバディが一緒に登校するシーン、美しすぎて何事かと思った。この時父が心に引きずっている不安や切なさが相まって何か嫌な胸騒ぎが止まず、これまた何故か泣く自分。

キャサリン可愛い〜。
ラストのお花のシーンもずっと涙。

音楽もずっと最高。
特に予告編の曲素晴らしい。

算数のテストが終わり、席替えのシーン。
キャサリンが3位になったことによるバディの「ふん〜」が可愛すぎて座席から落っこちるとこだった。ほんま尊い。尊死。ありがとう。

「マイティ・ソー」のコミックを読むバディ。クリスマスプレゼントの一つ、「アガサクリスティ」の小説。サービス要素としても嬉しかったが、誰もが少年時代に読み、心躍らされたあの作品を実際にかつて少年だった1人の人間が映像化しているという、『自分だったら』を思わず想像してしまう夢の詰まった演出に感激した。ケネス・ブラナー監督にとっても集大成なのかも。

多くの方に対して失礼な事を言うが、この作品にここまで感動できる自分が嬉しい。嗚咽するほど涙を流せて幸せだった。

なんでこんなに刺さったのだろう。
恐らく理屈ではない。

今まで自分を育てて下さった方々皆に感謝したい。ありがとう。

人生に、家族に乾杯。

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アカデミー脚本賞獲りましたね。大納得。
「コーダ」もおめでとう!

今年は日本人として良い夢を見させて頂きました。楽しかった〜!

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「皆家族よ。宗派が違うだけ」

「今の何?」
「母さんの秘密兵器」
こうゆうのに弱い。素敵..

「明日は皆で映画だ」
これ以上に幸せな日々ってない。
自分の家族を持って休日に皆で映画館に行く。これが自分の夢の1つになった。

「この地域に"サイド"はない。
 いやなかった。宗教は厄介だ」

「もう一度貴方に問う。
 どっちの道を選ぶ? では献金を」

「医者が悪い知らせが2つあると言った。
 1つ目は自分の余命が24時間であること。
 2つ目は昨日それが分かったこと」
シンプルにおもろい。

「愛の底には憐憫がある」
深ああ。

「わざと数字を読みづらく書け。
 先生が勝手に良い解釈をしてくれる。
 選択が増えれば勝率が上がる」

「答えが1つなら戦争は起きんよ」

「キャサリンと結婚できますように。
 彼女はロニーが好きだから
 結婚しても会うのは許すよ」
可愛いやっちゃな〜。

「母さんは手紙が来るといつも悲しそうだ」

「女を落とすには?
 老人は言った『教えてやろう』
 1番肝心なのは彼女を愛すること。
 ただ愛することだ」
からのハグ。涙止まらんべ。

「北アイルランド人は根っからの旅人よ。
 だから世界中にパブがある」

「聞いてもいいかカネを何に使った?」
「何のカネ?」
「歌のレッスン代だよ」
こーゆーちょっとしたシーンの会話のクオリティが凄まじい。なんてセンスなの。

「貴方はいつ胸が高鳴った?」
「茶色いストッキングを履いたお前を見た時さ」
もう〜!素敵〜!泣
このエピソードほんと良い。

「この街に人生の全てが詰まってる。
 皆があの子たちを知ってて
 世話を焼いてくれる。それが好きなの」
良い街だ〜泣

「母さんを頼むぞ」
このバスのシーン泣いたなあ。

「サンタもお金がないみたい」
「健康が最高のプレゼントよ」

「分からないのは聞こうとしないからだ」
おじいちゃんほんまに深い。何度も聞いたような言葉でも改めて重く自分の心に残る。

「自分が何者かは分かってた。お前はベルファスト15のバディだ。お前が何処に行って何になろうと一生味方だ。それが分かっていれば不幸にならない。覚えておけ」
涙が止まらない。
こんな温かい言葉ありますか。

「私も子供の頃映画が好きだった。
 スクリーンの中に入って
 その世界に行きたかった」
「いつか行ける?」
おばあちゃん..

「月を目指すんだ」

「ベルファストは消えやしない」
「じいちゃんは?」
「どこへも行かないよ」
泣泣

「コレステ何とかが1番高いと。
 何にせよ1番は良いことだ」
笑笑

「深い人だった。
 助けて貰った。何度もね」

「君に永遠の愛を誓おう」

「優しくてフェアでお互いを愛し合えば
 あの子もあの子の家族も大歓迎だ。
 何を信じていようとね」

「そうよ 行きなさい
 振り返らずに いつも想ってる」
友二朗

友二朗