プロテスタント系とカトリック系の争い、いわゆる北アイルランド紛争。
同じキリスト教でありながら、プロテスタントとカトリックでは細かい点でかなりの違いがある。
違う→理解できない、自分たちの方が正しい→攻撃。というわけで宗派間の紛争が絶えない。
そもそも聖書の根本的な思想は、皆が助け合い想い合って平和な世界を実現することであって、それがキリスト教徒にとってもっとも重要な目標のはず。
なのに、なぜこうなってしまうのだろう。
些末にとらわれ、神と同様の視点を持つことができない愚かでちっぽけな人間には、争いのない平和な世界を実現することなど不可能なんだろうか。
血塗られた歴史を描いた悲惨で重苦しい映画、を想像していた。
ところが。
どこまでもノスタルジックで暖かい映画だ。
ここに描かれているのは、家族や友達を想う気持ち、人との繋がり、人としての正しさだ。
暴動に紛れてあるものを盗んできた息子に母親が言った言葉。
違う宗派の女の子を好きになった息子に父親がかけた言葉。
宗教や宗派に関係なく、人を想い、尊重すること。傷つけないこと。
どんなときも、人として正しくあること。
暴力と争いの絶えないこんな世の中だからこそ、その言葉の尊さと重さに胸が締めつけられ、涙が込み上げる。
この映画で描かれているのは、紛争や悲劇よりもむしろ、大好きな家族と故郷。
闇ではなく光。
絶望ではなく希望。
アメリカの公民権運動の指導者でノーベル平和賞を受賞したキング牧師が、こんな言葉を残している。
「人はあらゆる衝突に対して、復讐や攻撃を伴わないような解決策を導き出さなければならない。
その土台となるのは愛である。」