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ベルファストのcinemageekのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
4.4
監督/ケネス・ブラナー

出演/ジュード・ヒル(主人公・バディ役)
カトリーナ・バルフ(母親マー役)
ジェイミー・ドーナン(父親・パー役)
ジュディ・デンチ(祖母役)
キアラン・ハインズ(祖父役)

 ケネスブラナー監督のアカデミー賞候補にもなっている「ベルファスト」
この映画は 一人の少年の目線で描いた 宗教の信仰の違いから 2に住んでいる街・ベルファストが舞台で、その街で見た群像劇物語であるとともに 夫婦の愛を描いた作品。

ポイント1
ケネス・ブラナーの自伝的内容は、
ある意味、日本の地方にも当てはまる名作

ポイント2
夫婦それぞれに 愛の形があることを教えてくれる

ポイント3
故郷に残った人、去った人、
そして亡くなった人への思いが溢れた1作


ちなみにベルファストといえば、
タイタニックを作った場所 造船の街としても知られますし映画の中にチラリとタイタニック通り なんてものもでますね
あと、機動戦士ガンダムでも連邦軍基地があったり、ミハルがホワイトベースに潜入した基地ですねー
 



歴史を持つ国であるイギリス。そのイギリスで長く問題になっている北アイルランドの問題。
北アイルランドでの問題と言えば、IRA と言う 北アイルランドの英国からの分離独立を目指すカトリック系住民の反英武力闘争組織がいろいろな映画に登場するが、今作はそのあたりとは関係なく、貧しい地域に住みつつ宗派の違いから暴徒に襲われることもある街、ベルファストで過ごす少年を中心にした物語

思春期を迎えた少年の淡い初恋や 生活の範囲内におじさんやおばさん。おじいちゃんやおばあちゃんがいることで少年が素直に育つ様子といった 古き良き「街のみんなで子供を育てる」というのは日本もイギリスも同じようにあったのではないかと思わせてくれる


その一方で抗いようのない現実に 苦労する主人公の父親と母親の姿 ふるさとと言う 最も大切で守りたいものに対して 逆に縛られてしまう思い入れが家族の行動を制限するという部分はリアルで日本人が共感しやすいポイントかも知れない


特に田舎であればあるほど 故郷という言葉に ある意味縛られてしまうはなしは よく聞く人もいるかもしれない。

加えて苦しくても、ふるさとは離れたくないという保守的な思考と 今の生活を見切りをつけて新しい一歩を踏み出す ことの難しさを見事に描いていると言える。


その一方で 夫婦間の愛情のあり方というものもしっかりと描かれている。加えて 主人公の おじいちゃんとおばあちゃんの会話の一つ一つが名言のオンパレードであり 相手を思いやり慈しむ(いつくしむ)ことの大切さも語っており、夫婦の間で一番大切なものに必要なことを教えてくる作品でもある


故郷というものに対しての 執着とも粘着とも呪縛ともとれる部分を振り払う決心が 暴力的な行為がきっかけになるというのはとても悲しいものではある。

しかしそれは日本においては地域の再開発でさまざまな選択を迫られた人々もいるわけで、そういった社会的な問題を浮き彫りにしつつもそこに残る人たちの思いも大切にすると言った 見事なバランスが取れた映画になっている

アカデミー賞にノミネートされたことも納得する一本


劇中に流れる映画やアイテム小物にもこだわりがあって、
「恐竜100万年」、「真昼の決闘」、「スタートレック」、「サンダーバード」、「チキチキバンバン」といった往年の名作をみてワクワクするバディの姿に、映画を楽しむことの本質を見せられた気もする
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