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ベルファストのkazataのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
2.0
本年度アカデミー賞複数部門ノミネートからの脚本賞受賞作をようやくウォッチ!

ケネス・ブラナーの役者としてのキャリア、思い出の地ベルファストでの過去の実体験&ノスタルジー、映画や家族への深い愛、本作を通して伝えたい平和へのメッセージ……そのどれもが素晴らしいってことは全く否定しないけれども、、、映画としては驚くほど超絶ツマラナイ!
(90分尺なのに体感時間の長さが『THE BATMANーザ・バットマンー』以上なんですけど…苦笑)
(典型的な"雰囲気映画"で、それだけで満足できるほどの美的センスや演出力も感じられず…)


(以下、不平不満を語る上で若干のネタバレあるかもです↓)


まず感じた印象として……とにかくヌルい上にダルい!
こちとらジャック・オコンネル主演(バリー・コーガンも出演!!)の大惨劇映画『ベルファスト71』を見ちゃってるからね。「いつになったら地獄展開が起こるんだよ…」と待ち構えていたら(確か)70年春までで終了って……
ちょっと待った!何だよ、この寸止めプレイは!!

ベルファストを舞台にして地元警察、ギャング集団、テロ組織(IRA)、反カトリックor反プロテスタントな市民達の全てが、経済&宗教問題で対立して暴力的なエネルギーが充満していく(=スパイ、強奪、密告しまくりで復讐の連鎖がエスカレートしていく)様子を一切スルーってWhy?おまけに、肝心の暴力&破壊描写も部分的で劇弱だし!
(物語的に「当時は子どもだったからわからなかった=主人公少年は知らない」ってことにするのはいいけどさ、大人になった今振り返って当時を描くなら「当時はわからなかった事柄や問題点を俯瞰的&批判的に描くこと」こそが大事なんじゃないの!?)
(冒頭でチャンバラごっこをやってた主人公少年が、暴力的な解決を否定する…的な成長描写もないし)
(ギャング憧れの従姉妹?キャラの扱いも微妙だし…ってか主人公含めて犯した罪に対する葛藤や後悔が感じられないんだよな。それこそ"懺悔"しにカトリック教会に行く展開とか描いてもいいのに)

なんとなく『ジョジョ・ラビット』みたいな"悲しい現実下でのコメディ"ノリをやりたかったんだろうけど、悲劇的なシーンだけでなく純情初恋シーンすらまともに描かない(事後説明ばかり…)のも理解不能!"月面着陸の研究課題"は二人の初めての共同作業なんだからさ、ちゃんとオンで描いてよ。
プロテスタントの主人公少年がカトリックの彼女の家に行って一緒に過ごすことで、宗派の違いを知ったり、逆に共通点に気づいたりすることこそが最重要でしょうよ!!
(最後になんとなくセリフで説明するだけでOKにしちゃう神経を疑っちゃうわ)
そんなわけで、『ジョジョ・ラビット』の下位互換のレベルにすら達していないと思うんですが。
(映画の引用も効果的とは思えないし、西部劇パロディも成立してなくね!?)
(ダンスシーンはあるのに、そこに身体性も意味も感じられないし……これまた『ジョジョ・ラビット』のダンスシーンの素晴らしさと比べても雲泥の差)

一事が万事こんな感じなんで、なぜ本作がアカデミー賞で脚本賞を獲れたのか、監督賞を始めとして複数部門でノミネートされたのか……ぶっちゃけ疑問だらけでした。
(ケネス・ブラナーの功績を讃えるのは脚本賞ノミネート止まりで十分過ぎるかと…)
(夫婦間の不和と宗教対立をまるで同じように見せられても「根本的に違うだろ!」って思うし、「愛があれば対立を乗り越えられる」って言いたいのはわかるけど……だったらその様子をちゃんと見せてよ!)
(「振り返らないで」的なセリフで締められてドヤられるけど……こっちからしてみりゃ「ちゃんと過去を振り返って学んで未来に繋げろよ!」って言いたくなるよね)
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