うしぱんだ

ベルファストのうしぱんだのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
4.0
1969年8月15日から始まる物語。北アイルランド紛争が背後にあるけれど、基本的に子どもの目に映るもので構成されているので、「子どもが殺された」とか会話には出てきても、人が血を流したり銃で撃たれるような場面はない。(家のガラスが割られたり車に火をつけられるだけでも十分怖いけど)
しかし実際には、この日、主人公バディと同じ9歳の少年が亡くなったのだとパンフレットで知った。初めての子どもの犠牲者だったそうだ。

そんな場所に、昭和の日本(イメージです)のようなコミュニティーがあって、家族で映画を観に行ったり親戚と集まってスポーツを楽しんだりする日常を送っていた人々がいた。そんな日常を大切に思うから、母親は危険だとわかっていても移住に反対する。残っていたら暴力に加担しないで済むとは思えないから、よかったんじゃないかと思ってしまったけれど、本当は他人がどうこう言えることではないのだろう。誰も無傷ではいられない。
バディの家族はみないい人達だけど、昔からあった火種が爆発してしまったら、個人の勇気とか優しさでは太刀打ちできない。なんとか子どもたちを未来に送り出すので精一杯だ。(それさえできなかった人達がいたと思うと本当に悲しい)

重めの感想になってしまったけれど、コミカルな場面もたくさんああった。
・好きな女の子と隣の席になりたくて課題でずるをする(彼女とのエピソードはとても可愛かった)。
・パパ、生活力はないけれど運動神経抜群。ウィリアム・テルかと思った。付き合ってる分は楽しいけれど結婚すると絶対苦労する(してた)。
名前「パ」って記号?パパであることが彼のアイデンティティ?
・それを言えばママの名前も「マ」だった。こんなモデルみたいなママなんてずるい。
・家族で映画を観に行って一斉に「おおー!」と見上げたり「もうだめだ」と舌を向いたりするところ、楽しかった。
・にぎやかなお別れ会、ママとパパがあまりにもキラキラしていて目が潰れそうだった。なぜ向こうの人はみんな踊れるのか。二人が仲良しだったのは救い。

制作者の映画愛と故郷愛が詰まってた作品。
家族至上主義って、いつもはちょっと苦手だけどちょっと脇に置いといて浸りました(子どもが結婚結婚いうんじゃない、とは思った)。