脳みそ映画記録

ベルファストの脳みそ映画記録のレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
4.0
これはすごかった!

冒頭の平和な日常が突然暴徒たちに蹂躙されるのが、衝撃的でした。

ベルファストの宗教対立についてはあまり明るくなく、これを機に少し調べてみたのですが、なかなか壮絶な対立だったみたいですね。
正直同じキリスト教だし、一応イギリス国内のことだし、対立と言っても精々民衆の小競り合い程度でしょ?と思ってましたが、多くの死人がでたり、軍が出動するほどの対立だったのですね。しかも、中世とかじゃなくて、ケネス・ブラナーの子供時代に起きていた最近の出来事!

そんな、激動のベルファストをケネス・ブラナーの子供時代がモデルのバディ少年の目を通して描かれます。
この映画の素晴らしいところは、常にこのバディ少年目線に特化しているところです。
なので、宗教対立についてフューチャーされているわけでなく、好きな女の子の隣に座りたかったり、おじいちゃんやおばあちゃんのお家でおはなししたりし、クリスマスのプレゼントを楽しみにしている男の子の話です。
当時のベルファストの記事は暗く恐ろしいことばかり書かれており、まるで灰色の世界だが、そこに生きてる人達がいて子供たちは子どもたちなりの世界を子供らしく生きていたんでしょう。

いつ暴動があるかわからないし、自警団に金をせびられたりするし、出稼ぎに出ないと家族を養えない、傍からみてるとさっさとこんな街引っ越せばいいのにと思うが、バディからするとここが故郷で友達も家族もいる世界のすべてなのですよ。
ベルファストの映画を作ることとベルファスト出身やそれに近いキャストを積極的に起用していることからケネス・ブラナー自身もかなり思い入れがある故郷なのでしょうね。

それと、作中モノクロの中に映画や舞台のフィクションには色がついてる演出がされています。
これは、バディ少年にとっては借金に苦しむ両親や暴動や争いのある現実より、フィクションの世界のほうがよっぽど現実的で色づくほど魅力的だったということかな?

ケネス・ブラナーが幼少期にみえていたのはきっとこんな世界なんだなという追体験ができました。