たま

ベルファストのたまのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
4.5
モノクロの映像がカラフルに感じた。
きっと少年バディの豊かな表情がそう感じさせたのだろう。

暴力と隣合わせの中、家族の絆や何気ない日常の愛しさが瑞々しく描かれている。

冒頭、家の前の通りで、子供たちがはしゃぎながら遊んでいる。それを見守る大人たち。
ごく当たり前の日常が、とても幸せそう。
誰もが生き生きとしている。

そこに突然爆発音が炸裂し、世界は一変する。

長年燻っていた、カトリックとプロテスタントの争いが一気に吹き出した。

バディ一家は、ベルファストのカトリック教徒が多く住む地区の、プロテスタントの住民。
なんとも複雑なモザイク状態の環境だけれど、住民同士が顔見知りで、暴動が起きるまでは、お互いの宗派なんて気にもしてなかった。

「宗教って厄介だ」

そんなバッググラウンドの中、映画の中心はバディの日々の生活だ。紛争の生々しさはあえて避け、バディ少年の目線で描いている。
演劇や映画に目を輝かせ、大好きな女の子との結婚を夢見、祖父母との時間を楽しみに、無邪気で無垢な9才のバディの大きな瞳はキラキラと輝く。

そこは愛に溢れた場所だった。
それでも次第に激しさをましていく暴動の中、家族は大きな決断を迫られる。

バディは大好きな女の子に別れを告げに行く。その後父に尋ねる「キャサリンと結婚できる?」
それに答える父の言葉に、胸が熱くなる。

今日も家の周りから、遊ぶ子供たちの声が聞こえてくる。楽しそうだ。
子供たちが幸せなのが、平和の証だなとつくづく思う。

どこの国の子供たちも、幸せな世界で生きられることを切に願う。
たま

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