1969年の北アイルランドのベルファストを舞台に、友人、近所の人々と、穏やかな生活を送っていた主人公の少年とその家族だったが、ある日を境に、カトリックとプロテスタントという帰属をめぐり、生まれ育ったベルファストを離れるか否かの選択を迫られる物語。
劇中劇以外は白黒で描かれているのが特徴ですが、白黒だからこその階調の豊かさや質感が美しい作品。ほとんどがベルファストの主人公バディの住む通りが舞台なこともあり、子ども目線の世界＝近所が全てであり、街の外は月と同じ、という物語が面白いです。誰しもが子どもの頃に持っている感覚だし、それを歴史と絡めてくるのが素晴らしいです。
主人公バディのピュアさもさることながら、おじいちゃんとおばあちゃんの温かさ、年長さとしての重み、いい意味での適当さが最高です。特に終盤のおばあちゃんは、表情ひとつで、この人の人生を想像させられる演技が素晴らしかったです。もちろん、最後に家族にかける言葉も、いろいろな感情が混ざり合って搾り出された言葉であることが分かることが素敵です。物語とキャラクターに裏打ちされたセリフ・演技は本当に刺さります。
歴史的な背景は重いものですが、あくまで子どもの目線で描かれた世界の美しい物語でした。
