ひとりの少年から見たアイルランド紛争の一場面。宗教や帰属の問題が見えながらも、幼いバディにとっては家族が一緒に暮らせるか、好きな子と勉強が続けられるかといった身近な問題の方が切実。何度もクロースアップされる彼の表情の豊かさに、紛争下でも子ども時代が失われていなかったことを感じる。
記憶の中の故郷を描くための白黒の世界は、整然とした画面構成と光が絵画のようだった。ノースリーブばかりの美人の母、祖父母の掛け合いなど、ブラナーが自身の幼少期をどのように回顧した(い)かがよく伝わってくる。物語としても、個人的経験の表し方としても、とても人間味があってよかった。
ジュディ・デンチをおばあちゃんに持てたら、どれだけ誇らしいか。