かじドゥンドゥン

ベルファストのかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
3.0
1969年の北アイルランド、ベルファストが舞台。プロテスタント地区では、カトリック教徒に対する襲撃が続発し、軍隊も出動するなど、内戦の様相を呈している。プロテスタントの一家に生まれた少年バディは、祖父母や両親から宗教的寛容さを教わり、実際に学校ではカトリックの少女に想いを寄せている。ところが、過激派は一家の寛容さを許そうとせず、意図せずして、一家は抗争に巻き込まれて行く。

出稼ぎでロンドンに滞在し、二週間に一度しか家に戻らないバディの父は、大工としての腕と勤勉さを見込まれ、上司からロンドンへの移住を持ちかけられる。妻(バディの母)は自分の両親のこともあり、故郷ベルファストを出たがらず、夫婦仲がぎくしゃくするが、近所の不良少女がバディを唆して対カトリック襲撃・奪略に加担させたことをきっかけに、この不毛ないがみ合いに失望した妻も移住に納得。一家はロンドンへ移住する。一人残されることになった老婆(バディの祖母)は、いくら故郷とはいえ賢明に見切りをつけて、幸せな将来を切り開こうとする若者たちを、全面的に肯定して、力強く送り出す。

物語としては退屈だったが、あえてモノクロにした映像と充実した挿入歌は、美的意識の高さをうかがわせる。アイルランドの宗教抗争を知る上で、教材としていい。