金宮さん

ベルファストの金宮さんのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
3.5
民族、宗教紛争の激しい北アイルランドに残るか移るか。出稼ぎでロンドンによく出向く父は子供のことも考え移住を提案するが、母は郷土愛から反対のよう。

第三者から見ると合理的判断としては移住一択にも見えるが、割とウェットな私としては土着派も理解できる。しかも残る選択肢を後押しするように、一緒に移住はしないであろう祖父母がとっても魅力的。特におじいちゃん。これが鑑賞者の気持ちも悩ませます。

おじいちゃんは金言をたくさん教えてくれるけど、どれもが説教臭くない。むしろチャーミング。「女性に振り向いてもらうには、相手を心から愛すること」と言っておばあちゃんとダンスをしたり、「人が何かを学ぶ時には胸の高鳴りが必要なんだ」と哲学的名言を言ったと思えば、その高鳴りは妻の茶色いストッキングの色気に感じたんだとおちゃらける。

郷土=先祖と考えると、最も身近な先祖である祖父母がこんなにも魅力的だと離れたくないよね。でもそんなおじいちゃん自身は「ベルファストはいつでも味方だ。例え言葉が通じなくても、それは聞く側の問題なんだから気にするな」と移住を後押しします。

子や孫の世代のことを第一に考えられる、洒脱なシニアを目指したい。そうすれば、誰かの帰ってきたい場所となる。そして今作のおじいちゃんはそのモデルケースとなりそう。

プロテスタントなので入植者であろう主人公一家に自然と郷土愛がうまれたのは、土着的執着ではなくそこに会いたい人たちがいるからですよね。

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ケネス・ブラナー監督は実際に9歳のときにベルファストからイングランドに移住しているので半自伝映画なんですね。町山さんの解説での「ちびまる子ちゃんみたい」という言及に納得。境遇の辛さは全く違えど、どちらも魅力的なおじいちゃんへのノスタルジー。
金宮さん

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