みりお

世界で一番美しい少年のみりおのレビュー・感想・評価

世界で一番美しい少年(2021年製作の映画)
3.7
過去レビュー連投📝


私を映画の世界に導くきっかけをくれた美少年ビョルン・アンドレセン✨
誰もが感嘆する美貌を持ちながら、『ベニスに死す』以外の出演作はほぼなし、かつ無名という謎に包まれたビョルンのドキュメンタリーが公開されるという情報を得て、ワクワクしながら母と鑑賞してきました♡

ただドキュメンタリーを観て感じたことは、辛さ・痛み・怒り…それが大半だった気がします。
1970年代の芸能界は、わずか15才の少年には冷たく、汚すぎて、『ジュディ』を観たときのような喪失感に襲われてしまいました💦
寡黙で大人びたタジオのイメージのまま記憶されるビョルンですが、『ベニスに死す』の撮影中の様子は、本当に屈託のない無邪気な少年で…
そんな彼が、オーディションで「裸を見せて」と言われて戸惑う様子や、意味のわからない薬を飲まされて馬車馬のように働かされた記憶を語る様子はあまりに痛々しかった。
祖母に言われてオーディションを受けるビョルンに「無理しなくていいんだよ。やりたいことをやりなさい」と伝えたいと、胸を掻きむしられる想いでした。

『ミッドサマー』で映像回に復帰したビョルン。
その経緯は分からなかったし、心境の変化があったのか、それとも経済的な問題かは分かりません。
でも深く深く傷ついた彼が、50年の時を経て日本で思い出の地を巡り、もう一度映像に撮られたいと思えるようになったことが、ただただ嬉しかった。
10代のビョルンの、あのほんの一瞬の輝かんばかりの美貌を映像に残してくれたヴィスコンティへの、感謝の気持ちは確かにあります。
でもビョルンがその後の人生をお酒と涙に包まれて暮らすくらいなら、あの作品は要らなかったと思う。
60代とは思えないくらい老け込んだビョルンが、残りの人生を少しでも穏やかに、幸せに包まれて暮らせるよう、心から願ってしまうような作品でした。
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