彼をモデルに『ベルサイユのばら』を描いたという池田先生同様、人間の一生の中での、もっとも美しいその一瞬感が切り取られた美しい映画だと感じていたけれど、本作を鑑賞したあとだとそれこそなんて残酷な感想だろうと思った。演技指導は主に「歩いて、止まって、振り返って、微笑んで。」だけだったというのに、こんなにも鮮烈な印象を観た者の中に残し、『ヴェニスに死す』を誰もが知る名画へと導いた美少年。過酷すぎる彼の運命を知った後も尚、最後に差し込まれた映画のワンシーンを見たらそれでもやはり美しいと思わずにはいられず、最悪な気持ちになった。
