のんchan

世界で一番美しい少年ののんchanのネタバレレビュー・内容・結末

世界で一番美しい少年(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ジャケ写の15歳のビョルン・アンドレセンは確かに美しかったが、『ベニスに死す』はまるで操り人形にしか見えず、私には違和感しかなかった。

ヴィスコンティが『世界で一番美しい少年』とキャッチフレーズを付けたばかりに、人生が激変してしまった一人の俳優の生き様がこのドキュメンタリーに収まっていた。

5年の歳月を掛けたドキュメンタリーを観て良かったと率直な感想だが、1本の作品として脚本されているのを承知の上で自分なりに感じ取った。
過去の映画の裏側映像やホームビデオなど貴重なフィルムは観る価値十分でした。

ネタバレを押しました。
以下は自分が忘れないためのメモとして詳細を書き留めます。



ビョルンは父親を知らない。母親が誰にも教えていなかった。
ビョルンにそっくりで美しい母親はボヘミアンだった。幼いビョルンと同じ年に生まれた妹を連れ、様々な国や場所を彷徨って生活していた。ビョルンが言うには
「母は芸術家、写真家、詩人、絵を描きジャーナリスト、アートギャラリーを持ち、ディオールのモデルもやっていた」
しかし、行方不明のまま森の中で死体で発見された。
祖母から育てられたが、孫の美貌を売り物にしビジネスに動いた人だった。

『ベニスに死す』のオーディションの様子が映っている。
ヴィスコンティから"脱いで"と言われた時の驚きの表情は普通の少年の恥じらいだった。

ビョルンの家庭教師の女性曰く
「ヴィスコンティのスタッフはほぼ全員同性愛者。皆がヴィスコンティを少し恐れていた。パワフルな人で眼差しは鋭くいつも厳しい口調で話す。情け容赦ない人だった」

カンヌ映画祭でヴィスコンティが言葉を理解していないビョルンをこき下ろした。
「当時はもっと美しかった、完璧な美しさ、今ではすっかり老けたよ...」自分が選び映画を作るだけ作って尻拭いどころか、突き放す。なんという傲慢さ、貴族だと何を言っても良いのか?いや出身は関係ない。なんという愚かな人間性なのかと驚きしかなかった。
撮影時も身長が高いことに文句を付けてる感じがあったが、監督と並ぶと同じ位だった。映画祭時は16歳になり、監督を10cmほども上回っていた。
そして、映画祭後に...監督とスタッフがナイトクラブ(ゲイ専用)へ連れて行き、そこで初めての体験をさせられてしまう。

世界の中でも日本での人気が異常に高かった。
日本のマスメディア、映画業界、トップ企業らは直ぐ様に目を付けて動き出した。
来日した時は一流カメラマンが付き、王子のような衣装があてがわれ、日本語での歌を録音、そしてCM撮り...ホテルでの生活が始まったのだった。

日本側も言葉も知らない少年が断れないことを知り金を動かした。それが出来たのは祖母がビジネス(金儲け)を契約したからだったのだが...
ビョルンは「地獄の大混乱。どこか別の場所で別の人間になりたかった」
そして「赤い薬を2〜3錠渡された、気分が楽になるらしいと 」
怖い、怖すぎる。誰が渡したんだ。
そして池田理代子が出てくる。あの『ベルばら』のモデルはビョルンだった。

ビョルンは『ミッドサマー』で驚きの変貌ぶりで出演しているが、白くなった長髪と髭を蓄えてまるで仙人のよう。話し方はゆっくりと優しい。狭いアパート暮らし。
今は若い恋人が世話をしてくれている。電話での喧嘩のやり取りも挟まれる。しかしその後に仲直りして幸せそうな二人が映るのも良かった。

「"ベニスに死す"の後は映画学校へ行き、TVや映画の仕事は沢山貰って仕事は順調だったが、心の闇は消えない」

ビョルンは長男を乳幼児突然死症候群で亡くしていた。それが自分の愚かさからだと後悔が止まない。しかし、父親を理解してくれている長女がいる。温かいハグが見れて良かった。

15歳の少年はただただ好きな音楽をやりたかっただけだった。
それを祖母とヴィスコンティによって道を外されたのは間違いない。
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