ゆうか

世界で一番美しい少年のゆうかのネタバレレビュー・内容・結末

世界で一番美しい少年(2021年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

自分の涙もひどいものに思えた。だけど同情とも違う、あまりに悲しい。父を知らずに父になり、息子を失う。
死んだように生きる。
母の詩との重なりに言葉が出ない。
娘が大人になり、父は子供になり、母娘のように見える瞬間まであった。世界一醜い赤子、という言葉に彼の娘を思う気持ちが表れていたのではないだろうか。自分と同じような人生になってほしくないという。
誰もいなかった。彼の心に寄り添い、支えてくれる大人が。
愛し愛されることを望んでいながら、そのやり方が分からないように思えた。さみしい。
削ぎ落とされた身体は
長い白髪は彼が歩くと風になびく。
あまりにもたくさんのものを失って、そのことに慣れてしまったような、何にも執着しない様子がスクリーン越しから伝わってくる。
原作にある海のような目を持っていると、かつて監督は言った。タージオが駆けた明るくきらきらとした海ではない。灰色の、どこまでも続き空との境界すら曖昧な寒々しい海。
彼には欲が見えない。感じられない。ただ受け止め、流れていくようだった。
ゆうか

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